研究課題
本年度は、スプライシング阻害時に細胞周期関連因子の発現が減少することにより細胞周期がG1期に停止することを見出した。また、遺伝子発現低下の分子メカニズムを解析したところ、これらの遺伝子から転写されたmRNA量が減少し、その結果細胞周期関連タンパク質の量が低下することが明らかとなった。さらに、スプライシング異常はこれらの遺伝子の転写開始には影響を与えなかったものの、転写伸長を抑制することでmRNA量を減少させることが明らかとなった。これらのことから、スプライシングに異常が生じた細胞では、細胞周期関連遺伝子の転写伸長が抑制され、スプライシング異常細胞の増殖が抑制されるという、細胞の品質管理機構が働いていることを明らかとした。加えて、スプライシング阻害剤によりスプライシングを阻害することにより、スプライソソームの構成因子であるU1 snRNPがpre-mRNA上に係留されリサイクルされず、新しく転写されたpre-mRNAに結合できるU1 snRNPの量が減少することが明らかとなった。その結果、u1 snRNPを阻害した際と同様に、転写途中の新規合成mRNAが異常な切断とポリA化を受けることが明らかとなった。このような短いmRNAが翻訳されることにより、C末端トランケート型タンパク質が産生されることがわかった。このようなトランケート型タンパク質も細胞の品質管理機構に関わっていると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、スプライシング阻害時に細胞周期関連遺伝子の発現が低下し細胞周期が停止するメカニズムや、スプライシング阻害時にmRNAが異常な切断とポリA化を受けることを明らかにし、論文を2報報告できたため。
今後は、pre-mRNA由来のトランケート型タンパク質の生理機能の解析や、細胞周期停止機構の更なる解明をすることで、スプライシング異常細胞を体内から排除する細胞の品質管理機構の更なる理解を目指す。
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