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2022 年度 実績報告書

スプライシング異常細胞を排除する「細胞の品質管理機構」の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02423
研究機関富山大学

研究代表者

甲斐田 大輔  富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (60415122)

研究分担者 高崎 一朗  富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (00397176)
岩崎 信太郎  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (80611441)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードmRNA / スプライシング / 細胞周期 / p27
研究実績の概要

本年度は、スプライシング阻害により、CDKインヒビターp27のmRNAが安定化することを見出した。すでに、スプライシング阻害により、p27のタンパク量が増加することは見出していたものの、その分子メカニズムは明らかとはなっていなかった。まずスプライシング阻害時のp27 mRNA量を測定したところ、顕著に増加していることが明らかとなった。また、スプライシング阻害がp27遺伝子の転写活性に与える影響を観察したところ、転写には影響を及ぼさなかった。そこで、p27 mRNAの安定性が変化するかを確かめたところ、スプライシング処理によりp27 mRNAが安定化することが明らかとなった。また、その安定化にはp27 mRNAの3'UTRが関わっていた。p27は細胞周期進行のブレーキとして働くことが知られており、生体はこの機構を用いることでスプライシング異常細胞の増殖を抑えていると考えられる。
また、スプライシング阻害細胞は、G1期とG2/M期で細胞周期を停止することが知られており、また、p27のpre-mRNAから翻訳されたC末トランケート型タンパク質p27*がG1期停止に関わっていることもわかっている。そこで、p27*がG2/M期停止に関わるかどうかを確かめたところ、スプライシング阻害細胞ではp27*がG2/M期において高発現しており、M期サイクリンと結合しその活性を阻害することでG2期停止を引き起こしていることを見出した。このように、様々なメカニズムによりスプライシング異常細胞の増殖が抑えられていることが明らかとなった。これらが、スプライシング異常細胞を体内から取り除く細胞の品質管理機構として働くことにより、体内の恒常性が保たれていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は、スプライシング阻害によりp27 mRNAが安定化することや、p27 pre-mRNAから翻訳されたp27*の生理機能を明らかにし、細胞の品質管理機構を明らかにすることができた。その結果、2報の論文を報告することができ、当初の計画よりも進んでいると考えられたため。

今後の研究の推進方策

今後は、p27 mRNAの安定化機構の更なる解明と、p27*以外のトランケート型タンパク質が増殖抑制や細胞死を引き起こすメカニズムの解明を行う。さらには、p27全長とp27*の機能の比較などを引き続き行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Spliceostatin A stabilizes CDKN1B mRNA through the 3′ UTR2022

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kaida and Kenta Shida
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 608 ページ: 39-44

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2022.03.085

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Truncated Form of the p27 Cyclin-Dependent Kinase Inhibitor Translated from Pre-mRNA Causes G2-Phase Arrest2022

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kaida, Takayuki Satoh, Ken Ishida, Rei Yoshimoro, and Kanae Komori
    • 雑誌名

      Mol. Cell. Biol.

      巻: 42 ページ: e00217-22

    • DOI

      10.1128/mcb.00217-22

    • 査読あり
  • [雑誌論文] スプライシング異常と細胞周期停止機構2022

    • 著者名/発表者名
      甲斐田大輔
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 94 ページ: 829-836

    • DOI

      10.14952/SEIKAGAKU.2022.940829

  • [学会発表] スプライソスタチンAは3’UTRを介してCDKN1B mRNAを安定化させる2022

    • 著者名/発表者名
      志田健太、甲斐田大輔
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部 第40回大会
  • [学会発表] スプライシング阻害剤はトランケート型タンパク質の産生を介して抗がん活性を発揮する2022

    • 著者名/発表者名
      甲斐田大輔
    • 学会等名
      第26回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] Study on the molecular mechanisms of G1 phase arrest caused by spliceostatin A treatment2022

    • 著者名/発表者名
      甲斐田大輔
    • 学会等名
      第26回日本RNA学会年会
  • [学会発表] スプライシング阻害がG1期停止を引き起こすメカニズムの解析2022

    • 著者名/発表者名
      甲斐田大輔
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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