研究課題/領域番号 |
21H02429
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
徳光 浩 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 教授 (20237077)
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研究分担者 |
石川 彰彦 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (10263617)
渡辺 泰男 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (10273228)
曲 正樹 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 助教 (50359882)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CaMKK / タンパク質リン酸化反応 / Ca2+シグナル伝達 / 酵素阻害剤 / TIM-063 / タンパク質リン酸化酵素 / 分子間相互作用 / 多量体 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞内Ca2+を二次伝達因子とする細胞内シグナル伝達機構において、神経発生、遺伝子発現制御から代謝応答まで多岐に渡る生体機能調節を担う制御酵素として見出されたタンパク質リン酸化酵素であるCaMKKの分子制御機構の解明とその分子基盤に立脚したCaMKK阻害薬の創製を研究目的としている。本年度の研究実績として、消化管平滑筋におけるカルシウム脱感作反応においてCaMKKを介したリン酸化カスケード反応の関与が、新たに開発したCaMKK阻害剤TIM-063を用いることで明らかとなった(Kitazawa et al. Am J Physiol Cell Physiol 2021)。さらにCaMKKと阻害剤TIM-063の物理的相互作用について、TIM-063誘導体(TIM-127)を架橋したセファロース担体を用いることにより詳細に解析した。その結果、CaMKKと阻害剤TIM-063の相互作用は、酵素のカルシウム/calmodulin結合に依存しており、不活性型のコンフォメーションをとるCaMKKは阻害剤に結合しないこと、さらにはCaMKK/阻害剤結合はCaMKKの活性化状態に依存して可逆的であることを証明することに成功した(Ohtsuka et al. Biochemsitry 2022)。これまでCaMKKはその分子構造が単量体と考えられていたが、本研究において培養細胞に遺伝子導入したCaMKKアイソフォームは、多量体を形成することを細胞膜透過性架橋剤を用いることで明らかにした。さらに、この遺伝子導入細胞より単離した多量体CaMKKは、リン酸化酵素として酵素活性を有することも併せて証明することができた(Fukumoto et al. Biochem Biophys Res Commun 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記述したように、本年度内に当該研究により予定していた研究課題について一定の成果を得ることで、3報の国際学術論文を発表するができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果をさらに発展させる方向で推進する。特に、本年度開発した酵素阻害剤を架橋したセファロース担体(TIM-127セファロース、Ohtsuka et al. Biochemsitry 2022)を利用した酵素・阻害剤相互作用解析法を用いて、リン酸化酵素阻害剤の課題であるOff-target分子の同定法に結びつけたい。これにより既存薬物(CaMKK阻害剤)の副作用の予見のみならず、同定したOff-targetリン酸化酵素の同定から新たな薬効評価につなげ、さらなる新たなリン酸化酵素阻害剤の開発法のモデルを提示したい。またCaMKK分子自身の酵素機能については、多くのリン酸化酵素にも見られるリン酸化基質認識の特異性についてその詳細を検討し、明らかにしたい。これまでにCaMKKの分子内領域に存在する基質分子の認識配列をLoss-of-functionの研究手法により特定しており、この領域を他のリン酸化酵素に遺伝子工学的に組み込むことで新たな基質認識を獲得する(Gain-of-function)研究手法を用いて、証明を試みている。試験管内の生化学的解析により得られたCaMKKのリン酸化基質認識機構が細胞内においても機能することも確認する。さらに、CaMKK阻害剤による薬理学的研究を補完するために、CaMKKアイソフォームのノックアウト細胞の樹立も進めているところである。
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