研究課題/領域番号 |
21H02430
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宇留野 武人 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (80532093)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / 治療抵抗性 / メタボライト / 免疫回避 |
研究実績の概要 |
本研究は、がん微小環境におけるコレステロール硫酸(Cholesterol sulfate: CS)を介したがんの免疫回避機構の解明と、それを標的とした新たな抗腫瘍療法の開発を目的とする。今年度は以下を行なった。 ・複数のマウス同系腫瘍移植モデルを用いて、SULT2B1bを発現するがん細胞がCSを介して腫瘍内へのT細胞浸潤を抑制し、腫瘍を増大することを示した。さらに、CS産生がんは、種々の免疫療法に対して抵抗性を示すことを明らかにした。 ・Public databaseの解析によって、SULT2B1遺伝子の高発現が、複数のがん種で予後不良と正の相関を示すことを明らかにした。 ・SULT活性を阻害しCS産生を抑制する低分子化合物3β-hydroxy-5-cholenoic acidを同定し、同阻害剤の投与によってマウスにおけるSULT発現がんの免疫療法抵抗性が解除されることを実証した。 ・上記成果を基に、第95回日本生化学大会において、「コレステロール代謝と疾患制御の新たな展開」と題したとシンポジウムセッションを主催するとともに、自身でも「コレステロール代謝と腫瘍免疫回避」に関する講演を行なった。また、カナダ・アルバータ州バンフにおけるCancer Immunotherapyに関するKeystone Symposiumに招待され、現地で講演を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・複数のマウス同系がん細胞株を用いて、SULT2B1/CSを介したがんの免疫回避を実験的に証明することが出来た。 ・公表されているデータベースの解析を通じて、ヒトの複数のがん種でSULT2B1発現と患者予後との相関を見出した。 ・独自に同定した阻害剤を用いて、SULT発現がんの免疫療法抵抗性を解除できることを実証した。 ・ヒト及びマウスのSULT2B1b遺伝子レポーターシステムを構築し、発現応答領域の解析に着手した。 ・CSの細胞内・外の動態に関わるトランスポーターの同定を目的とした細胞アッセイ系の構築に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
・CS動態に関連する薬物を用いて、CS産生量とSULT発現がんの腫瘍形成への影響を調べる。 ・TCGAデータベース及び関連する既報データを基に、様々ながん種におけるSULT2B1発現と治療抵抗性の関連を検証する。 ・レポーターアッセイ、及び複数のがん細胞株(SULT発現高・低)における比較発現解析、候補遺伝子導入実験によって、SULT2B1遺伝子発現を制御する因子の解析を進める。 ・CSの細胞内外の動態制御に関わるトランスポーターを同定するために、がん細胞からのCS放出、標的細胞におけるCS取り込みを指標に、In vitroで候補遺伝子KOスクリーニングを実施する。
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