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2022 年度 実績報告書

ゲノムワイド探索に基づくスフィンゴ脂質再利用経路の包括的な分子機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02435
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

山地 俊之  国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (50332309)

研究分担者 谷田 以誠  順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (30296868)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードスフィンゴ脂質 / サルベージ経路 / ゲノムワイドスクリーニング / リソソーム
研究実績の概要

生体膜脂質の重要な構成成分であるスフィンゴ脂質は、新生経路(de novo経路)の他、血中・細胞膜由来のスフィンゴ脂質がリソソーム分解を経て再利用される経路(サルベージ経路)により生合成される。サルベージ経路の生理的重要性は、リソソームにおけるスフィンゴ脂質の分解不全が遺伝性疾患を引き起こすことから示唆されるが、同経路のスフィンゴ脂質輸送機構に関しては十分な解明に至っていない。本研究ではサルベージ経路に焦点を当て、申請者がゲノムワイド探索で同定したこの経路に関与する遺伝子候補群を生化学的・細胞生物学的に解析することで、スフィンゴ脂質のリソソームから生合成の場である小胞体に至る輸送機構の全容解明を目的とする。
本年度は、スクリーニングで濃縮された遺伝子群のノックアウト(KO)細胞を用いて、血清由来スフィンゴ脂質の代謝への影響を検討した。親株においては取り込まれたスフィンゴミエリンが時間経過を経てセラミド及び糖脂質へと代謝されるのを確認した。一方酸性スフィンゴミエリナーゼKO細胞ではセラミド以降の増加は見られず、またスフィンゴシン-1-リン酸ホスファターゼKO細胞では、セラミドの一過性の増加は見られるものの、糖脂質の増加は見られなかった。これらの結果はこれまでの報告と一致した。一方スクリーニングでは濃縮されなかったが、サルベール経路への関与が考えられている酸性セラミダーゼに関しても、ノックアウト細胞の作製及び脂質解析を行い、サルベージ経路におけるスフィンゴミエリンからの代謝に関して一定の知見を得た。またダブルKO細胞を作製することにより、それぞれの遺伝子同士における遺伝学的相互作用に関する知見を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究において、培地中のスフィンゴミエリンが細胞に取り込まれてからのスフィンゴ脂質各分子種の変動を追跡することが可能となった。また各遺伝子KO細胞及び発現復帰株、抗体等、解析に必要な道具を揃えることが出来た。これらのことより、今後スクリーニングで同定したタンパクのサルベージ経路における機能解明が加速すると考えられる。

今後の研究の推進方策

引き続きスクリーニングで濃縮された遺伝子群のノックアウト(KO)細胞を用いて、以下の解析を行うことで、同定したタンパク質のサルベージ経路における役割の詳細を明らかにする。
1. 細胞外より取り込まれたスフィンゴ脂質の代謝解析:R4年度は細胞外から取り込まれたスフィンゴ脂質の代謝に関して、質量分析器を用いた追跡系を構築した。R5年度は作製した種々のノックアウト細胞を用いて、脂肪酸組成を含めた詳細な脂質解析を行うことで、スフィンゴ脂質のどのステップの代謝が阻害されているか検討する。
2. 同定したタンパクの細胞内局在解析:同定したタンパクの細胞内局在を、市販の抗体もしくは作製したペプチド抗体を用いて共焦点顕微鏡で解明する。またタグ付きのタンパクを発現させて抗タグ抗体で検出する、もしくは蛍光タンパク融合タンパクを発現させて観察する。
3. オルガネラへの影響解析: 走査型もしくは透過型電子顕微鏡を用いて、サルベージ経路の機能障害によるリソソームや後期エンドソームを中心に、細胞内オルガネラの形態変化及び数量の変化を観察する。またスフィンゴミエリンの蓄積が予想される場合、蛍光顕微鏡と透過型電子顕微鏡で同一の場所を観察できるCLEMを用いて、スフィンゴミエリンやコレステロールの蓄積がリソソームであるか後期エンドソームであるか、それとも他のオルガネラで起こっているか特定する。必要に応じて生化学的なリソソーム単離を行い、脂質分析等行う。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Construction of Sphingolipid Remodeled Cells by Genome Editing2023

    • 著者名/発表者名
      Yamaji T, Homma Y
    • 雑誌名

      Method Mol Biol

      巻: 2613 ページ: 111-125

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-2910-9_10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hyperosmotic Stress Induces Phosphorylation of CERT and Enhances Its Tethering Throughout the Endoplasmic Reticulum2022

    • 著者名/発表者名
      Shimasaki K, Kumagai K, Sakai S, Yamaji T, Hanada K
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci

      巻: 23 ページ: 4025

    • DOI

      10.3390/ijms23074025

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Compartmentalization of casein kinase 1 γ CSNK1G controls the intracellular trafficking of ceramide2022

    • 著者名/発表者名
      Goto A, Sakai s, Mizuike A, Yamaji T, Hanada K
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 25 ページ: 164624

    • DOI

      10.1016/j.isci.2022.104624

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Involvement of a cluster of basic amino acids in phosphorylation-dependent functional repression of the ceramide transport protein CERT2022

    • 著者名/発表者名
      Goto A, Egawa D, Tomishige N, Yamaji T, Shimasaki K, Kumagai K, Hanada K
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci

      巻: 23 ページ: 8576

    • DOI

      10.3390/ijms23158576

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カゼインキナーゼ 1γ の C 末端脂質修飾に依存した細胞内局在変化がスフィ ンゴミエリン生合成におけるセラミド輸送を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      後藤麻子、酒井祥太、水池彩、山地俊之、花田賢太郎
    • 学会等名
      第64回脂質生化学会
  • [学会発表] C10orf76-PI4KB軸によって遠位ゴルジ体へのCERT依存性セラミド輸送が組織化される2022

    • 著者名/発表者名
      水池 彩、酒井 祥太、加藤 薫、山地 俊之、花田 賢太郎
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] Casein kinase 1γの分布区画化が小胞体―ゴルジ体間セラミド輸送を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      後藤麻子、酒井祥太、水池彩、山地俊之、花田賢太郎
    • 学会等名
      第15回セラミド研究会学術集会・第16回スフィンゴテラピィ研究会合同年会
  • [学会発表] 極長鎖セラミド依存的なネクロプトーシスの誘導2022

    • 著者名/発表者名
      北谷和之、小木曽悠里、山澤龍治、伊藤 潔、松田将也、山地俊之、花田賢太郎、坂本 渉、Daniel Canals、Yusuf A. Hannun、奈邉 健
    • 学会等名
      第15回セラミド研究会学術集会・第16回スフィンゴテラピィ研究会合同年会
  • [学会発表] ヒトマクロファージによる抗酸菌の殺菌機構における極長鎖脂肪酸鎖を有するスフィンゴ脂質の役割について2022

    • 著者名/発表者名
      花房慶、中山仁志、山地俊之、岩渕和久
    • 学会等名
      第15回セラミド研究会学術集会・第16回スフィンゴテラピィ研究会合同年会
  • [学会発表] 小胞体-ゴルジ体間セラミド輸送の場の多様性2022

    • 著者名/発表者名
      水池 彩、酒井 祥太、加藤 薫、山地 俊之、花田 賢太郎
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会

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公開日: 2023-12-25  

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