αシヌクレインのアミロイド線維化は、パーキンソン病の発症と強い相関がある。このタンパク質は神経細胞内でユビキチン化されるが、最近の研究から、ユビキチン化αシヌクレインが液-液相分離し、それが軸索輸送と呼ばれる神経細胞の流れによってアミロイド線維化することが示唆された。しかし、この一連の過程の詳細、とくに構造変化や凝集状態の変化などはよく分かっていない。そこで本研究では、神経細胞内で実際に起こっているαシヌクレインのユビキチン化と軸索輸送(流れ)を試験管内に再現し、それを原子・分子レベルで解析することによって、αシヌクレインの液-液相分離とアミロイド線維化の機構を解明する。なお、流れの存在下における原子レベルの解析には、申請者らが開発した、試料に流れを発生させながらNMR測定が行えるRheo-NMRを用いる。 昨年度はポリエチレングリコールによってαシヌクレインを液-液相分離させ、まずは顕微鏡観察によってαシヌクレインが非膜オルガネラを形成していることを確認した。その後、各種3次元NMR法により液-液相分離した状態のαシヌクレインのNMRシグナルを帰属した。さらに、この状態からRheo-NMRの流れによってアミロイド線維化する過程をリアルタイムかつ原子レベルで計測した。その結果、バッファー中(希薄溶液中)よりもずっと速くアミロイド線維化することが分かった。また、Rheo-NMR測定後の試料をチオフラビンTアッセイと電子顕微鏡により調べた結果、アミロイド線維が多量に存在するが、その形状はバッファー中からアミロイド線維化させてものと比べると短く太かった。
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