研究課題
基盤研究(B)
細菌の運動器官であるべん毛の軸構造は、剛直なロッド、柔軟なフック、剛性に富みながら超らせん形態が変化するフィラメントで構成される構造体である。このような複雑な構造体を形成するしくみ、物性・機能・構造・シンメトリーが異なる各部を結合して連動させるしくみは不明である。本研究では、軸構造形成途中の構造および短繊維べん毛変異体の構造をクライオ電子顕微鏡により解析し、フックおよびフィラメントが成長するしくみ、フックとフィラメントを結合するしくみを解明した。
生物物理学・構造生物学
生命活動を担う複雑な生体分子超複合体の多くは、シンメトリーミスマッチを利用して作られ作動する。本研究で解明されたべん毛軸構造の構築のしくみは、他の生体超分子複合体の構築・作動原理を理解する上で重要な知見であり、さらには、ナノスケールでの力学研究やナノマシン設計に向けて重要な基盤となる。また、べん毛軸構造形成阻害をターゲットとして細菌運動性を奪うことで感染を阻止する新しいタイプの薬剤開発の構造基盤となる。