研究課題/領域番号 |
21H02444
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 敦史 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (20188890)
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研究分担者 |
岡村 康司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80201987)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膜電位 / タンパク質 / 構造生物学 |
研究実績の概要 |
電位依存性ホスファターゼVSPは、膜電位という電気信号を酵素活性の制御という化学信号に変える膜タンパク質であり、生物における電気信号の新たな役割を示す重要な分子である。本研究では、VSPの様々な状態の詳細な原子構造を解明し、VSPが電気信号を化学信号に変える動作機構の理解を目指すとともに、電気生理実験や蛍光アミノ酸ANAPを利用した実験により、細胞内の動きを追うことを試みた。 この目的を達成するために、従来の研究で静止状態が安定化していることが知られている野生型VSPを対象として発現・精製条件の決定を進めた。様々な界面活性剤をスクリーニングした結果、動的光散乱(DLS)で単分散を示し、ゲルろ過、SDS-PAGEで結晶化に供すことのできる純度であることが確認できる試料調製条件を決定することができた。 さらに、ホヤ由来VSP(Ci-VSP)について、電気生理学、蛍光測定、構造モデリングを組み合わせたアプローチにより、膜電位変化が酵素活性に与える影響について調べた。その結果、S4の最下流にある2つの疎水性残基が、電位センサードメイン(VSD)と細胞質酵素領域(CCR)のカップリングに重要な役割を果たすことを見いだした。また、Voltage Clamp Fluorometry(VCF)とジスルフィド結合実験により、S4とその隣のリンカーが1本のヘリックス(S4-linker helix)として動き、CCRのhydrophobic spinと呼ばれる領域に近づくことが示された。このhydrophobic spineは、VSPにおいて電気信号を化学信号に変換するためのハブとして機能していると考えられる。 また、これまでに構造が得られているVSPと各種基質複合体の構造を基にして、PTENの基質認識機構についてのを明らかにすることを目指した分子動力学計算を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電位依存性ホスファターゼ(VSP)の動作機構の解明を目指し、静止状態が安定化していることが知られている野生型VSPの構造解析を目指して、発現・精製条件の決定を進めた。様々な界面活性剤をスクリーニングし、動的光散乱(DLS)で単分散を示し、ゲルろ過、SDS-PAGEで結晶化に供すことのできる純度であることが確認できる試料調製条件を決定することができた。この試料を元に、構造解析に着手することとした。 また構造解析と平行して、電気生理学、蛍光測定、構造モデリングを組み合わせたアプローチにより、膜電位変化が酵素活性に与える影響について調べたところ、電位センサードメイン上のS4の最下流にある2つの疎水性残基が、電位センサードメイン(VSD)と細胞質酵素領域(CCR)のカップリングに重要な役割を果たすことを見いだした。また、Voltage Clamp Fluorometry(VCF)とジスルフィド結合実験により、S4とその隣のリンカーが1本のヘリックス(S4-linker helix)として動き、CCRのhydrophobic spinと呼ばれる領域に近づくことが示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、動的光散乱(DLS)で単分散を示し、ゲルろ過、SDS-PAGEで結晶化に供すことのできる純度であることが確認できる試料調製条件を決定することができた。この条件を元に大量調製法を確立するとともに、負染色による電子顕微鏡観察を行い、試料の性状調査を行い、構造解析につなげていくとともに、計算科学、電気生理学等と組み合わせて、その機能解明を目指す。
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