研究課題/領域番号 |
21H02463
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
川上 浩一 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (70195048)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 遺伝子トラップ / トランスポゾン / 発生生物学 / 行動遺伝学 |
研究実績の概要 |
スプライスアクセプターの下流にIRES、Gal4FFを組み込んだ改良型遺伝子トラップコンストラクトをランダムにゲノムに挿入させ、トランスジェニックフィッ シュ系統を新たに100系統樹立した。 トランスポゾン挿入部位を決定し、トランスポゾン挿入部位をゲノム上へマップした。得られた発現パターン情報、挿入部 位のゲノム情報については、独自のデータベースに登録し閲覧・検索可能にした。これらのトランスジェニックフィッシュを基に国際共同研究を行い、①自律神経による膵内分泌細胞の活動調節を明らかにするために、膵神経のin vivoイメージングモデルを確立した。膵神経はすべての膵島細胞型と接触しているが、主にベータおよびデルタ細胞と接触している。神経支配が膵島機能に不可欠な同型および異型細胞結合の維持に重要な役割を果たしていることを示した。②マウス、ゼブラフィッシュ、および細胞培養モデルを使用して、K-ATPチャネル機能の変化に由来する脳機能障害の細胞および分子レベルの原因を調査した。我々は、脳の血管平滑筋細胞の分化におけるKCNJ8/ABCC9を含むK-ATPチャネルの役割を示し、それが脳血流の微調整に必要であることを示した。③脊椎動物の骨格は、軟骨細胞、骨芽細胞、および破骨細胞の活動を通じて発達中に形状を変える。骨が領域および種特異的に形作られる新しい骨格リモデリングのメカニズムを明らかにした。④正中鰭の発生過程は細胞および分子レベルではまだ明らかでない。我々は、正中鰭が基底脊索動物の連続した鰭折り目のいくつかの位置を減少させることは背鰭の原基出現に役割を果たさないことを示した。代わりに、減少は原基形成後に体の成長とともに起こり、細胞死を誘導することで非鰭形成領域を積極的に削除するのではない。また、特定の間葉細胞の出現とその増殖が背鰭原基の形成を促進することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)遺伝子トラップゼブラフィッシュ系統の樹立 スプライスアクセプターの下流にIRES、Gal4FFを組み込んだ改良型遺伝子トラップコンストラクトをランダムにゲノムに挿入させ、トランスジェニックフィッ シュ系統を新たに100系統樹立した。 トランスポゾン挿入部位を決定し、トランスポゾン挿入部位をゲノム上へマップした。得られた発現パターン情報、挿入部 位のゲノム情報については、独自のデータベースに登録し閲覧・検索可能にした。これらのトランスジェニックフィッシュを基に国際共同研究を行い、英文原著論文を出版してきた。 (2)終脳の機能的神経回路の解明 哺乳動物終脳の海馬に相当するゼブラフィッシュ終脳の機能解析のための痕跡恐怖条件付け学習および空間学習の行動アッセイシステムの開発に成功した。終脳 の背側側方部の脳神経細胞にGal4を発現する系統とUAS下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせた二重トランスジェニックフィッ シュが、海馬機能のアッセイシステムにおいて行動異常を示すことを明らかにしつつある。同定した神経細胞群についてRNA-seqによる発現プロファイル解析を行い、哺乳類の海馬の神経細胞群との相同性を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)遺伝子トラップ系統の樹立:スプライスアクセプターの下流にIRES、Gal4FFを組み込んだ改良型遺伝子トラップコンストラクトをランダムにゲノムに挿入させ、トランスジェニックフィッシュ系統を研究期間内に新たに300系統樹立することを目指す。 トランスポゾン挿入部位を決定し、トランスポゾン挿入部位をゲノム上へマップする。得られた発現パターン情報、挿入部位のゲノム情報については、独自のデータベースに登録し閲覧・検索可能にしていく。これらのトランスジェニックフィッシュを基に国際共同研究を推進する。 (2)終脳の機能的神経回路の解明: 哺乳動物終脳の海馬に相当するゼブラフィッシュ終脳の機能解析のための痕跡恐怖条件付け学習および空間学習の行動アッセイシステムの開発に成功したので、これを用いて終脳の背側側方部の脳神経細胞にGal4を発現する系統とUAS下流に神経毒素遺伝子をもつトランスジェニックフィッシュをかけあわせた二重トランスジェニックフィッシュが、海馬機能のアッセイシステムにおいて行動異常を示すか否か検討する。同定した神経細胞群についてRNA-seqによる発現プロファイル解析を行い、哺乳類の海馬の神経細胞群との相同性を明らかにする。成魚の脳のGal4発現パターンを収録するアダルト脳アトラスのデータベースを構築する。
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