研究課題/領域番号 |
21H02466
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 直幸 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50545704)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | プロテオミクス / シグナル伝達 / タンパク質キナーゼ / 質量分析 |
研究実績の概要 |
ヒト由来の培養細胞株の破砕物に対してヒトキナーゼの組換え体を用いたin vitro試験を行い、リン酸化された基質タンパク質及びリン酸化部位をLC/MS/MSにより大規模に同定した。具体的にはin vitroキナーゼ反応後に酵素消化を行い、リン酸化ペプチドの濃縮をヒドロキシ酸修飾酸化金属クロマトグラフィー法により行った後、陰イオン交換クロマトグラフィーによる前分画してLC/MS/MS測定を行うことにより、in vitroキナーゼ基質の同定数が分画なしの条件と比較して大幅に向上した。また、in vitro基質の同定数を増加させて基質モデルを改良後にキナーゼ選択的人工基質ペプチドの再設計を行い、in silico予測、および合成ペプチドを用いたin vitro試験によるキナーゼ選択性評価を行った結果、基質選択性の類似したキナーゼに対しても特異的な基質配列を設計可能なことが示唆された。一方、未変性条件下におけるin vitro試験反応を数個のキナーゼを用いて評価した結果、変性条件下と比較して脱リン酸化効率やリン酸化効率が低いことが示されたことから、脱リン酸化条件の改良やキナーゼ基質同定手法の高感度化が必要であることが分かった。 また、近位依存性ビオチン標識(BioID)法と特定キナーゼ摂動後のリン酸化プロテオーム解析、in vitro基質モデルを組み合わせることにより、生理的条件下におけるキナーゼ基質の効率的な絞り込みを行う手法を開発し、Molecular&Cellular Proteomics誌に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未変性条件下におけるキナーゼ基質同定法には改良の必要があり、十分な基質情報の取得が達成できていないが、一方でin vitro基質数増加による各キナーゼのリン酸化モデルの改善と人工基質ペプチドの選択性向上が得られることが明らかになった。また、別法により生理的条件下における基質同定にも成功しており、研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、未変性条件下におけるキナーゼ基質同定法の確立、およびキナーゼ基質情報の取得を実施する。また、未変性条件下におけるin vitro基質情報をもとに、十分な基質数が得られたキナーゼのクラスタリングを行う。類似性の高いキナーゼ群に共通にみられるアミノ酸配列をキナーゼ結合モチーフとして抽出する。調製した合成ペプチドに対し、表面プラズモン共鳴装置を用いてキナーゼとの相互作用解析を行い、結合親和性およびキナーゼ選択性について評価を行う。特に、これまでキナーゼ結合モチーフが報告されていないキナーゼを優先して、新規モチーフの推定および結合親和性評価を実施する。結合親和性が評価されたキナーゼ結合モチーフをもとに、リン酸化タンパク質の責任キナーゼを推測し、さらに実験的に同定されたリン酸化部位あるいは公共データベース上の情報に対し、各キナーゼの基質モデルを用いてキナーゼ-基質間情報の予測を部位レベルで行う。
|