研究実績の概要 |
間葉系幹細胞の基質の硬さ依存的な分化誘導の制御機構について、特に、基質の硬さによる機械的刺激に対する応答とアクチン骨格再構築の観点から研究を進めている。昨年度までに、間葉系幹細胞の脂肪細胞分化をモデルに、低分子量G蛋白質Rhoファミリーの活性化因子であるRhoGEFの網羅的な発現抑制スクリーニングを行い、脂肪細胞への分化を抑制、促進するGEFを多数見出した。本年度は、それらの結果の再現性を確認し、また、分化に対する影響の基準をより精査して脂肪細胞分化に関与するRhoGEFの候補を選別した。その結果、発現抑制によって脂肪細胞分化を促進するもの、すなわち分化の抑制に関与する可能性があるもの14種類と、発現抑制によって分化を抑制するもの、すなわち分化の促進に関与する可能性があるもの7種類を同定した。脂肪細胞分化を抑制するものの中でRhoAを活性化するGEFは9種類あり、一方、分化を促進するものにはRhoAのGEFはなかったことから、RhoAの活性化は脂肪細胞分化を抑制する傾向があることが示された。また、RhoAを標的としないRhoGEFで、分化を抑制するものと促進するものが見出された。特に、分化を促進する働きをもつものは、アクチン骨格の再構築制御を介して脂肪細胞分化を制御する可能性があり、新たなシグナル伝達機構の存在が示唆された。また、RhoAを標的とするGEFのうち5種類のAKAP13, ARHGEF10, ARHGEF11, ARHGEF15, ARHGEF40, BCRは機械刺激応答に関与することが示唆されており、これらのGEFが基質の硬さに依存した間葉系幹細胞の分化方向の決定に関与する可能性が示唆された。
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