研究課題
ノックダウンにより生殖細胞形成に異常をきたす母性遺伝子として、spargel (srl)を同定した。Srlは転写コアクチベーターであるPGC-1のホモログである。srl-null卵巣においてvasa mRNAの現象が観察されたことから、vasaの強制発現によりsrl-nullの異常が相補されるかを検討した。その結果、生殖質因子のヌアージへの集積は回復したが、生殖質への局在は回復しなかった。srl-null卵巣では、oskar RNAの生殖質領域への局在が低下しOskタンパク質の発現が激減していた。この異常はvasa強制発現では回復しなかった。Srlには機能未知のRNA結合ドメイン(RRM)が存在する。現在、Srlがoskar mRNAを制御している可能性を検討すべく、UAS-SrlΔRRMを作成しsrl-nullの表現型の相補性について検討する予定である。また、生殖質アッセンブリーにおけるAubergine局在を促進する因子として同定したTppについて、Tpp-APEX2ノックイン系統を作成し、近接因子標識法により相互作用因子候補を探索した。その結果、Tudorドメインを持つCG9925が同定された。EGFPノックイン系統を作成したところ、CG9925とTppがヌアージにおいて共局在していることを確認した。Tppホモログは左右相称動物で保存されており、配偶子形成過程で発現している。マウスには3つのパラログ(Gtsf1, Gtsf1l, Gtsf2)が存在する。さらに、Gtsf1lの遺伝子重複によって生じた、BC025082.1配列がZfp850の3´ UTR配列中に存在する。機能未知のGtsf1l, Gtsf2, BC025082,1について三重ノックアウト変異体(TKO)を作成した。残念ながら、TKOに異常は検出されなかった。
2: おおむね順調に進展している
Srl, Tppともあらたな知見が集積しており、研究は概ね順調に進展していると考えている。
Srlについて、3xFLAG, 3xTy1タグをノックインした系統を作成済である。今後、卵巣を用いたクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)解析を行い、Srlの標的遺伝子の同定をめざす。また、Srlと共役する転写因子候補としてEts97Dを同定している。Ets97Dについてもタグをノックインした系統を作成しており、Srlとの相互作用の解析、ChIP-seq解析等を進める予定である。Tppについては、APEX2による近接因子標識解析をスケールアップして進める予定である。また、tpp変異体におけるsmall RNAの動態解析を進めており、新たな知見が得られることを期待している。マウスTppホモログのTKOについては、残念ながら表現型異常が確認されなかった。長期間の飼育により、早期に不妊化する等について検討するため、飼育を続けている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Current Biology
巻: 32 ページ: 386-397
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http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/germline_development/