研究課題/領域番号 |
21H02500
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
福田 裕穂 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (10165293)
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研究分担者 |
遠藤 暁詩 京都先端科学大学, 総合研究所, 講師 (00342759)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物 / 発生・分化 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
本研究では、植物小ベプチドであるCLE1p-CLE7p、pCLE43p、CLE45pなどを対象に乾燥、光、感染、温度といった環境刺激の応答性とシグナル機能を解析し、どのようにそれらの環境刺激を仲介するのかを明らかにすることを目的とした。本年度は特に以下の項目について成果を得た。 1.CLE3の発現制御の研究を進めた。定量的リアルタイムPCR解析により、CLE3の発現はNPR1依存性サルチル酸(SA)シグナル伝達およびFLS2シグナル伝達経路によって調節されていることが明らかになった。根においてSAに誘導されるCLE3pの発現がシュートにおけるWRKY33遺伝子の活性化に必要であることを明らかにし、システミックなシグナルの存在を示唆した。beta-エストラジオール誘導性プロモーターの制御下でCLE3を過剰発現するトランスジェニックシロイヌナズナ系統を作成し、マイクロアレイ解析をした。その結果、根に限定されたCLE3の過剰発現がシュートでの遺伝子発現に影響を与えることが明らとなった。これらの結果をもとに、Plant Molecular Biology誌に論文を発表した。 2.CLE5は乾燥刺激により,唯一その発現が上昇する遺伝子であった。そこで、本年度はそのシグナルの実態に迫るために、松林博士と共同研究でCLE5を過剰発現された植物体から、その産物を分離同定した。その結果、活性型CLE5pは2つのヒドロキシプロリンを持つペプチドであることを明らかとした。 3.CLE43の低温誘導性について、pCLE43-GUSを導入した植物を用いて調査をした。その結果、葉では恒常的に発現しているが、雌蕊では低温時にのみ発現することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年4月に東京大学から京都先端科学大学に移動し、植物を育てる環境が変わったために、植物生育を安定化するために時間がかかり、CLE5p及びCLE43,CLE45に関する研究の進展が遅れた。その代わり、本来は2年目で行う予定であったCLE3pの研究を精力的に進めた。これは、CLE3pの研究が共同研究であることから、植物を龍谷大学で育成することができたためである。その結果、申請書に書いた研究の多くを実施することができ、この成果をもとに論文を公表できたことから、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年の積み残しと、新たに環境メディエーターとして働く可能性を発見した、CLEペプチドについて研究を進める。CLE5pについては、気孔における役割とシグナル伝達について、その受容体とその受容体シグナル伝達機構の解析を行うとともに、乾燥シグナルとして働くABAとの関連を中心に研究を進める。新規CLEペプチドについては、遺伝子の乾燥誘導性、突然変異体での表現系などについて研究を進める。CLE43,CLE45については、アンチセンスによるその発現制御について解析を行う。
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