研究実績の概要 |
生体膜を構成する脂質の一種であるPI(4,5)P2は、真核細胞において位置情報をもつシグナル分子としてさまざまな制御機能を果たすことが知られている。シロイヌナズナにおけるPI(4,5)P2産生酵素をコードするPIP5K遺伝子群について遺伝学的解析手法を用いてPI(4,5)P2およびそれら遺伝子群の機能が解析された。PIP5K4、PIP5K5、PIP5K6遺伝子を欠失した三重変異体は雄性不稔であることが示された。それら遺伝子がコードするPIP5Kに蛍光タンパクを付加したPIP5K-YFPをそれぞれの遺伝子プロモーターで発現させることによって三重変異体の稔性を回復することができた。それらYFP融合タンパク質及びPI(4,5)P2蛍光分子マーカーは、いずれも花粉の発芽以前に発芽予定位置の細胞膜上に存在することが観察された。また、PIP5K-YFPを発現する三重変異体の花粉では発芽とそれに続く花粉管先端成長が正常に進行したが、PIP5K-YFPを発現しない三重変異体の花粉では花粉全体が膨潤し発芽における細胞極性が喪失していることが示された。以上の結果から、花粉発芽における細胞極性の確立にはPIP5K4、PIP5K5、PIP5K6によって細胞内局所的に産生されるPI(4,5)P2のシグナル機能が必要であることが明らかとなった。
|