研究課題
本年度は、LHF1タンパク質のドメイン解析と下流因子の解析をおこなった。LHF1タンパク質は既知のC2ドメインとC末端の保存性の高い領域を持っており、これらのドメインに変異を入れ、lhf1変異体の表現型を相補するかどうかを確認することにより機能解析を行った。既知のC2ドメインに変異をいれると機能が失われることがわかったため、C2ドメインがLHF1の機能に重要であることが明らかとなった。また、C末端に蛍光タンパク質を付加させたLHF1は機能を相補できなかったため、C末端の重要性が示唆された。また、C末端の保存領域に変異をいれた場合にもLHF1の機能は失われた。次に、LHF1下流遺伝子の機能解析をおこなった。RNAseq解析の結果から、特に発現変動が大きかった遺伝子に着目し、lhf1変異体における早い時間での発現パターンをqRT-PCRによって解析した。いくつかの遺伝子は、吸器誘導物質処理後15分以内に発現が上昇するが、lhf1変異体では、発現上昇がみられなくなったため、LHF1が吸器誘導初期に働いていることが明らかとなった。これらの遺伝子の発現抑制ラインの作成および恒常的発現ラインの作成を行なっている。いくつかの遺伝子ではドミナントネガティブ型の過剰発現により吸器誘導が抑制されることが確認され、下流のシグナル因子であると考えられる。また、シロイヌナズナのLHF1ホモログについて、CRISPRによる変異導入ラインの作成を進めた。ゲノム編集コンストラクトを作成し、形質転換によりT1個体を作成した。しかし、変異が目的遺伝子に入っていなかったため、ベクターを変更して再度作成を試みている。
2: おおむね順調に進展している
LHF1の重要ドメインを同定し、下流因子の候補が絞れてきた状態である。また、リン酸化サイトの役割も明らかになってきた。シロイヌナズナの変異体の作成を行なっているが、目的変異系統を得ることができなかったため、再作成中である。それ以外の点では当初の予定通り順調に進展しているため、概ね順調に進展していると判断した。
LHF1下流タンパク質が同定できてきたが、直接の下流ターゲットであるかが不明であるため、相互作用の確認を行う。また、LHF1の生化学的な機能を大腸菌発現タンパク質を用いて検証する。シロイヌナズナ変異体系統の表現型解析により、LHF1の祖先的な機能の理解を進める。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件)
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