研究課題/領域番号 |
21H02512
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
祢宜 淳太郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70529099)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 葉緑体 / 表皮(敷石)細胞 / アントシアニン / 耐塩性 |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナやコナギ、ソラマメなど多岐にわたる植物種の表皮組織では、孔辺細胞だけでなく、それを取り囲む表皮(敷石)細胞にも葉緑体の存在が確認できる。しかし、なぜ表皮細胞に葉緑体が存在するのか、その意義については不明な点が多い。本研究では、表皮葉緑体を欠損したシロイヌナズナ変異体を用いて、植物のストレス応答にどのような影響が出るのか解析することで、その役割について考察した。孔辺細胞の葉緑体が欠損したシロイヌナズナ変異体gles1(Negi et al. PNAS 2018)は表皮細胞の葉緑体も欠損していることが分かった。gles1に様々なストレスにさらした場合の生理応答を解析した結果、塩ストレスにより表皮細胞特異的に誘導されるアントシアニンの蓄積が抑制され、塩ストレス耐性も低くなることを明らかにした。さらに、この表現型はgles1において孔辺細胞特異的にGLES1を発現させた相補系統では回復しないが、表皮組織全体でGLES1を発現させた相補系統では回復した。これらの結果は、塩ストレスによるアントシアニンの合成制御に表皮葉緑体が必要であることを示唆している。現在、表皮葉緑体が塩ストレス環境下でアントシアニン合成を制御するメカニズムとして、葉緑体を合成起点とするジャスモン酸がシグナルとして働く可能性について検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つであった表皮葉緑体の新規機能に関する知見を得ることができた。加えて、表皮葉緑体がアントシアニン合成を介した耐塩性にどのように関与するのか、その分子メカニズムに関しても解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
塩ストレスに応じて表皮組織でジャスモン酸シグナルが活性化することで、アントシアニン合成が促進される可能性について検証する。具体的には、ジャスモン酸応答性のプロモーター制御下でGFPを発現する形質転換植物を利用したレポーターアッセイや組織ごとのジャスモン酸定量解析によって、ジャスモン酸合成、及びそのシグナル伝達が表皮特異的に活性化していることを明らかにする。
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