研究課題/領域番号 |
21H02514
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小田 祥久 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30583257)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞壁 / 微小管 / 低分子量GTPase / 植物 |
研究実績の概要 |
細胞の形態形成は個々の細胞の機能、さらには個体の正常な発達に必須である。植物においては細胞壁の沈着パターンが細胞形態の主な決定要因である。植物の発生過程では様々な細胞が固有の細胞壁パターンを構築することにより細胞の多様な機能と形態を実現している。細胞全体にわたる固有の細胞壁パターンを決定する設計図、すなわち細胞壁のグランドデザインはどのようにして構築されるのであろうか。本研究では螺旋、網目、孔紋など全く異なる細胞壁パターンを作り分ける道管組織に着目し、細胞が固有の細胞壁パターンを作り出す仕組みの解明を目指す。申請者が見出した道管細胞壁パターンのタイプ変換活性を持つ新規タンパク質を中心に、細胞骨格や低分子量Gタンパク質の時空間的なふるまいを独自の道管分化誘導系を用いて解析する。その振る舞いを細胞内外で再構成すること により、細胞内で固有の空間パターンが構築される仕組みを解明する。細胞内での空間パターンの構築は道管のような植物細胞に限らず細胞形態の要であることから、本研究は普遍的な細胞形態形成の理解に繋がるはずである。今年度は道管細胞壁パターンのタイプ変換活性を持つ新規タンパク質の細胞内での局在、およびその変異体における細胞骨格の挙動、過剰発現による細胞骨格動態への影響を、昨年度作出した一連の形質転換体群を用いて共焦点レーザー顕微鏡および全反射顕微鏡を用いて解析した。シロイヌナズナ懸濁培養細胞、およびベンザミアナタバコの葉の表皮を用いて一過的な発現による当該因子の局在と動態も解析した。当該遺伝子の多重変異体を作出する準備も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は道管細胞壁パターンのタイプ変換活性を持つ新規タンパク質の細胞内での局在、およびその変異体における細胞骨格の挙動、過剰発現による細胞骨格動態への影響を調べるため蛍光タンパク質を融合した対象遺伝子の発現体や、変異体背景および過剰発現背景で微小管マーカーやアクチン繊維マーカーを発現する形質転換体の解析を行った。スピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡および全反射顕微鏡を用いた詳細な観察と、各種画像解析による定量化を行った。シロイヌナズナ懸濁培養細胞、およびベンザミアナタバコの葉の表皮を用いて、エストロゲン誘導系による一過的な過剰発現実験も行った。全体としては順調に進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今回作出したシロイヌナズナ形質転換体のさらに詳細な解析を行う予定である。道管細胞壁パターンのタイプ変換活性を持つ新規タンパク質の原生木部および後生木部における細胞内での局在を各種顕微鏡を用いて観察する。二次細胞壁を染色し二次細胞壁の沈着部位との関連を解析する予定である。細胞内局在に加え、タイムラプス観察によりその動態も明らかにする。対象遺伝子の過剰発現体では微小管およびアクチン繊維の分布や、重合脱重合のダイナミクス、束化の度合いに影響を受けるかどうか定量的に解析する。次に、細胞内局在や細胞骨格への影響に重要な内部ドメインを明らかにするために、構成ドメインを一つずつ除去したtruncationシリーズのプラスミドを作成し、シロイヌナズナ変異体に導入する。一部の対象遺伝子はシロイヌナズナで重複した遺伝子が存在しているため、その冗長性を調べるため、CRISPRを用いた変異の導入を継続する。
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