研究課題/領域番号 |
21H02518
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 暢 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任准教授 (50396917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 上皮管腔組織 / 胆管 / 組織リモデリング / 肝再生 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
生体の組織構造維持のメカニズムの解明は、その破綻に起因する種々の疾患の発症機構や組織老化の仕組みを理解するうえで重要である。我々は、肝内胆管上皮組織のリモデリングの過程において転写因子Klf5の機能欠損により胆管組織構造の崩壊が誘導されることを見出し、その崩壊の過程を時系列を追って観察可能なユニークなin vitro実験系(ディスオルガノイド Disorganoid)を樹立した。本研究課題では、このディスオルガノイドを活用した種々の解析を行うことで、胆管組織の崩壊と維持において鍵となる細胞動態と遺伝子機能を明らかにし、管腔上皮組織構造の維持に関わる新たな分子メカニズムを解明することを目的としている。 これまでに実施したRNAシークエンシング解析(in vitro系およびin vivo系)の結果にもとづき、Klf5下流で胆管組織構造の崩壊あるいは維持に関与する可能性のある候補遺伝子・パスウェイを複数同定した。それら候補について発現パターン/活性化プロファイルの確認や、機能の検証・解析を実施した結果、胆管組織構造の安定化に関わる候補分子の一つとして細胞外マトリクスの構成分子であるラミニンのサブユニットの一つLaminin-b3(Lamb3)を同定した。Lamb3は肝臓においてはもっぱら胆管特異的に発現しており、この発現は肝臓特異的Klf5欠損マウスでは消失していた。次に、Lamb3 floxマウスをもちいて肝臓特異的なLamb3欠損マウスを作製した。このマウスに胆汁うっ滞性肝障害を与えたところ、胆管の細胞増殖には影響が無かった一方で、胆管組織構造の崩壊が顕著に誘導されるとの結果を得た。以上により、胆管自身で発現・作用するKlf5 - Lamb3シグナル経路が組織構造の安定化・維持を介して胆管リモデリングに関わる可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に則ってKlf5の下流標的遺伝子の探索から細胞外マトリクスの構成分子Laminin-b3(Lamb3)を同定し、その肝臓特異的欠損マウスの作出に成功した。さらに、この肝臓特異的Lamb3欠損マウスをもちいた解析から、この分子が実際に胆管組織構造の維持に関与する可能性を示すことができた。肝臓特異的Klf5欠損マウスの作出・繁殖に当初の想定よりも時間を要したことから研究計画の一部を翌年度に繰越して実施したが、計画していた内容についてはおおむね予定していたとおりに実施し、期待される成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って推進していく。
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