研究実績の概要 |
メダカでは発生期にエストロゲンやエストロゲン作用を持つ化学物質が作用するとオスからメスへの性転換が起きる。また成魚においても、精巣中に卵が発生し(精巣卵)、肝臓では卵黄・卵膜タンパク質(ビテロジェニンやコリオジェニン)を産生するようになる。メダカを含む現生魚類の大部分を占める真骨魚類は、系統特異的な全ゲノム倍数化に伴い、3種類のエストロゲン受容体(ESR)サブタイプ(EESR1, ESR2a, ESR2b)を有している。真骨魚類の各ESRサブタイプの機能分化や生理作用の差異についての理解はほとんど進んでおらず、例えばどのESRサブタイプを介して性転換やメス化に関わる遺伝子が制御されているか未だ不明である。本年度は野生型のメダカで精巣卵が出現する条件下で、各ESRKOメダカのオス成魚にエストロゲンをばく露し、精巣卵の有無を調べた。その結果、ESR2b KO系統オスでは野生型メダカに対して出現個体や総数は少なかったものの精巣卵の出現がみられた。一方、ESR1 KO及びESR2a KO系統のオスでは精巣卵は全く誘導されなかった。卵形成関連遺伝子の発現変動を調べた結果、ZPC5、42sp50、Figalpha遺伝子は、野生型オスではエストロゲン投与によって発現が有意に増大した。一方、ESR1 KO及びESR2a KO系統オスに対し有意な発現上昇がみられた。ESR2b KO系統オスでは、有意差は確認されなかったが、その発現量は若干上昇した。以上の結果から、精巣卵形成にはESR1およびESR2aが主に関与することが明らかとなった。
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