研究実績の概要 |
7a-OH-Pregと 7a-OH-DHEA の合成酵素Cyp7b1 の欠損マウスとScop 欠損マウスはどちらも、空間学習はできるが記憶の長期維持能力がないという共通の表現型を示す。記憶の長期維持能力は、海馬や前頭前皮質の神経細胞の樹状突起スパインと関連があるため、Scop 欠損マウスとCyp7b1 欠損マウスの樹状突起スパイン密度の計測をおこなった。Cyp7b1欠損, Scop 欠損ともに海馬歯状回と前頭前皮質のスパイン密度の減少が観察され、Scop とCyp7b1 はともに、Spine 形成に関わる何らかのメカニズムに関与していると考えられた。 また、7a-OH-Pregと 7a-OH-DHEA は遠隔記憶を高める効果があるものの、その作用機序はわかっていない。作用機序の手がかりを得るために、Cyp7b1 欠損マウスの脳内に7a-OH-Preg/7a-OH-DHEA を投与し、海馬および前頭前皮質の RNAseq解析を行ない、WT, Cyp7b1 KO, 7a-OH-Preg/7a-OH-DHEA 投与Cyp7b1 KOの3者の比較を行った。その結果、神経変性疾患と関連のあるいくつかの遺伝子が浮かび上がった。 また、遠隔記憶の学習時刻による違いが、どの脳部位の時計によって制御されているかを明らかにするため、まずは、前脳特異的な概日時計破壊マウス(Bmal1 flox/Emx1-Cre mouse)を作成した。また、関与する脳部位をより限局するため、Cre発現AAV を脳局所(前頭前皮質、海馬)に投与するためのウイルス作成、投与位置決定、Cre発現check など、AAV による脳局所破壊の条件を整えた。
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