研究課題
哺乳類における概日時計の中枢は、視床下部に位置する「視交叉上核」に存在し、時計遺伝子群の転写・翻訳を介したフィードバックループにより24時間のリズムが生成される。そのリズムは外界の明暗環境に同調し、最終的に睡眠・覚醒や体温リズムなど様々な生理機能の時間的調節を行う。これまでの多くの研究から、現象的に概日時計がこれらの生理機能を調節している事が示されてきたが、実際どの神経回路がどの生理機能の時間調節に関与するのかは、ほとんど明らかにされてこなかった。このような背景から、申請者は数年前から視交叉上核からの出力神経回路の探索を進め、最近睡眠・覚醒調節に関わる視床下部内の新しい神経回路を発見し報告した (Ono et al., 2020 Science Advances)。概日時計は睡眠・覚醒のリズムのみならず、体温リズムも調節している。重要な点は、現代の時間生物学の基盤を創ったユルゲン・アショフが、睡眠・覚醒と体温リズムは異なるメカニズムで調節されている事を示した点にある (Aschoff Science 1965)。つまり、睡眠・覚醒を調節する神経回路と、体温を調節する神経回路は独立に存在する事が示唆されている。本研究では、マウスを用い、概日時計による体温調節メカニズムを神経回路レベルで明らかにする。これまで、マウスを低温環境下で24時間の絶食を行うと体温が30度以下に低下する事を確認した。また時計遺伝子欠損マウスを用いて同様の実験を行い、この低体温状態のタイミングが、概日時計による支配であることを突き止めた。
2: おおむね順調に進展している
低温環境かつ絶食による低体温状態が概日時計による支配であることを、遺伝子改変マウスを用いて検証できたこと、さらにその神経回路の探索に着手できているため。
視交叉上核特異的に光操作ツールを発現させ、光照射により人為的に視交叉上核の神経活動を操作し、低温環境かつ絶食による低体温状態の変化を検証する。また視交叉上核からの下流領域を探索し、体温調節に関与する領域とマーカー分子の探索を進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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