申請者はこれまでの研究で、マウスが不確実な将来報酬をじっと待つ間に背側縫線核のセロトニン神経を選択的に活性化させると、より長く待てるようになる、つまり簡単に諦めなくなることを明らかにしている。この理由について申請者は背側縫線核のセロトニン神経活動には、将来的に報酬が得られるという「内的な(こころの中での)確信度」を調節する役割があるのではないかと考えている。本研究はこの仮説を検証し、さらにその神経メカニズムを明らかにする目的で計画された。実験では報酬確率変化課題遂行中のマウスのセロトニン神経活動観察を投射元、投射先両方について行った。 報酬確率変化課題:マウスがエサ小窓に一定期間ノーズポークをすることで報酬を獲得する課題。報酬までの遅延時間は3秒に設定され、報酬確率は25%、50%、75%、100%の4条件に変化させた。 実験1: セロトニン神経選択的にカルシウムセンサーGCaMP6を発現させたマウスの背側縫線核から各課題中にセロトニン神経活動記録 実験2: 実験1と同じ遺伝子改変マウスを用いた各投射先(前頭眼窩野、内側前頭前野)における各課題中のセロトニン神経活動記録 現在までこれらの実験を実施し、上記の仮説を支持する興味深い成果を得ている。特に実験1に関して、先行研究には見られない特徴を示すセロトニン神経活動の記録に成功した。現在論文投稿準備中である。 将来の目標を達成するために、どれだけあきらめないでいられるかはその成功のカギとなる。本研究成果は目標達成のための意思決定における神経メカニズムの中でセロトニンの担う役割について新たな方向性を示すものであると考える。
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