本研究では、湿度上昇に対し、秩序パターンが崩壊し、最終的に大部分の線虫が運動を停止した凝集塊を作ることを見出した。この凝集塊の観察を続けると、静止した線虫集団が無秩序に運動を再開するのではなく、数秒のうちに一斉に運動状態へ転ずる現象が再現よく観察された。この集団全体が静から動へ転移する様子は、ミツバチが外敵に対して行うシマリングという威嚇行動や鳥の群れの外敵に対する水面からの羽ばたきなど自然界で多く見られる時間軸上の自己組織化現象である。これらでは通常、集団全体として外部刺激に反応しやすい臨界状態に近いことが知られる。したがって、本状態転移の分子神経機構の一端を本研究にて明らかにした。
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