研究課題
温度は動物の生死に直結する環境情報であり、温度応答を司る脳神経系と組織ネットワークの制御メカニズムの解明は重要トピックである。本研究では、C. elegansのオリジナルの低温耐性・馴化のシンプルな実験系をつかい、温度受容から神経回路、そして組織ネットワークに至る温度情報処理システムを分子遺伝学と光技術を組合せ多面的に捉える。温度馴化の解析系をもちいて、個体の温度応答に関わる神経や組織回路の情報処理の新しい制御機構の同定をめざした解析行った。2023度までに、記憶を司る転写因子が頭部の温度受容ニューロンと介在ニューロンで機能し、その神経情報伝達を尾部の介在ニューロンが仲介する結果を得ていた。さらに、頭部のニューロンから分泌される神経ペプチドFLP-7が温度馴化に関わり、その神経ペプチドが腸の神経ペプチド受容体NPR-22で受容されることが温度馴化に必須であることが示唆されていた。また、中性脂肪酸の染色から、それらの変異体において温度依存的な腸の代謝状態が起きることが示唆されていた。そこで、2023年度は、温度馴化の際に腸でどのような分子機構が機能することで低温耐性の獲得や消失が起きているかをトランスクリプトーム解析などから調べた。また、そのトランスクリプトーム解析から得られた遺伝子に関して、変異体を用いて温度馴化や低温耐性を測定し、実際にそれらの遺伝子が温度馴化や低温耐性に関わっているかを調べた。その結果、複数の遺伝子で温度順化の異常が見られ、そのうち2つを戻し交配したところ、温度順化異常が保持されていた。また、全身周回性の神経回路と腸を繋ぐ新たな神経細胞の同定も進めた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://kuharan.com/index.html