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2022 年度 実績報告書

性染色体初期および転換期の疑似的作出による遺伝子量補償の即時性と柔軟性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 21H02539
研究機関東京都立大学

研究代表者

野澤 昌文  東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (50623534)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード遺伝子量補償 / 重イオンビーム / 性染色体 / ショウジョウバエ / 遺伝子発現
研究実績の概要

1. ネオX染色体における即時遺伝子量補償の検証
今年度は、昨年度末に行った、鉄イオン2Gyを照射したミランダショウジョウバエ(D. miranda)のオスの繁殖力及びゲノム配列、トランスクリプトーム配列の決定を行った。その結果,照射オスでは繁殖力の低下が見られた。しかし、ゲノム中に大きな欠失は生じていなかった。また、ネオY染色体上のシングルコピー遺伝子には欠失が有意に入りにくいことが分かった。この結果は、ネオX染色体上の遺伝子に即時遺伝子量補償は作用せず、ネオY染色体のシングルコピー遺伝子を消失した個体に有害であった可能性を示唆する。より大きな欠失を得るため、アルゴンイオン50Gyを照射し、解析を進めている。
2. 性染色体から常染色体への転換時における遺伝子量補償
昨年度に得た、ネオX染色体を持つD. mirandaとその近縁種でネオX染色体に相同な常染色体を持つウスグロショウジョウバエ(D. pseudoobscura)の雑種のRNA-seqデータの解析を進めた。その結果、雑種では不和合によると思われる異常な遺伝子発現パターンが観察されたが、遺伝子クラスタリングによって不和合の影響を受けづらい遺伝子群を抽出したところ、ネオX染色体の遺伝子発現量は有意に低下していた。現在,雑種不和合の影響をより完全に排除してX染色体の常染色体転換を模倣するため、CRISPR-Cas9法を用いてX染色体を2本持つオスの作成を試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

重イオンビーム照射による大規模なゲノム欠失個体を得ることはできなかったが、欠失のパターンから遺伝子量補償の即時性はあまりないという仮説を得ることができたため。また、雑種の遺伝子発現を詳細に調べることで、雑種不和合の影響をできるだけ排除した形で遺伝子量補償の柔軟性を検証する方策を見出しつつあるため。

今後の研究の推進方策

遺伝子量補償の即時性に関しては、欠失のパターンからあまり即時性がないことが示唆されているため、この結果を論文として公表することを目指す。また、より多くの重イオンビームを照射した個体のゲノム、トランスクリプトームを決定し、さらに上記の仮説を検証する。
遺伝子量補償の柔軟性に関しては、今年度得られた結果を論文として公表するとともに、Drosophila albomicans(アカショウジョウバエ)とD. nasuta(テングショウジョウバエ)の雑種のRNA-seqについても同様の解析を行い、論文として公表することを目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Testing immediate dosage compensation by irradiation of heavy-ion beams to<i>Drosophila miranda</i>2023

    • 著者名/発表者名
      Ogawa Masafumi、Tsuneizumi Kazuhide、Abe Tomoko、Nozawa Masafumi
    • 雑誌名

      bioRxiv

      巻: - ページ: 536214

    • DOI

      10.1101/2023.04.10.536214

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 性染色体進化の新モデル2022

    • 著者名/発表者名
      野澤 昌文
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 40 ページ: 1417~1418

    • DOI

      10.18958/7011-00004-0000158-00

  • [学会発表] Drosophila obscuraの性比異常現象における原因因子の探索2023

    • 著者名/発表者名
      加藤雄大,陳胤佳,野澤昌文
    • 学会等名
      学術変革B「性染色体サイクル」第1回領域会議
  • [学会発表] 種間雑種で性染色体の進化過程を明らかにする2023

    • 著者名/発表者名
      小川雅文,野澤昌文
    • 学会等名
      学術変革B「性染色体サイクル」第1回領域会議
  • [学会発表] 重粒子線照射によるショウジョウバエ Y 染色体の部分破壊:遺伝子量補償の即時性の検証に向けて2022

    • 著者名/発表者名
      小川雅文,常泉和秀,阿部知子,野澤昌文
    • 学会等名
      第94回日本遺伝学会
  • [学会発表] 多様なショウジョウバエを用いて解明する性染色体の進化過程と遺伝基盤2022

    • 著者名/発表者名
      野澤昌文
    • 学会等名
      生命科学4プラットフォーム 「支援説明会・キックオフシンポジウム」
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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