研究課題/領域番号 |
21H02542
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
山崎 曜 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 助教 (40816021)
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研究分担者 |
北野 潤 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 収斂進化 / 集団構造 / 多面発現 / 鱗板 / トゲウオ科 |
研究実績の概要 |
適応進化に使用される遺伝子や変異は予測可能だろうか?収斂進化は類似した選択圧のもと類似した形質が独立に進化する現象である.収斂進化に使用される遺伝子は特定のものにバイアスする場合が多く見られる.このバイアスを引き起こす要因こそが,適応進化の遺伝的基盤を決める要因と考えられる.本研究では,トゲウオ科魚類で確認されている,鱗の枚数減少の収斂進化の遺伝的基盤を対象とする.この適応進化においてホットスポット遺伝子やホットスポット変異が生じる要因を,特に集団構造と多面発現効果に着目して解明する. 本年度は以下の内容を実施した.まずトゲウオ科のイトヨについて,昨年度までにゲノム編集によるEdar遺伝子のノックアウト個体の作製に成功していた.そこでこのノックアウト個体同士を掛け合わせることで,Edar遺伝子への変異をホモ接合で持つ個体を作製した.現在これらの個体を育成中である.次にQTLマッピングによりEdarとEdaの原因変異を特定するために,多数のF2を産出できる家系を作製した.2022年度に野外より採集された鱗板完全型の大型のメスと鱗板欠損型のオスを交配させることで多数のF1を得た.これを生育することで,多数のF2が得られる見込みである. イトヨと同様に鱗板変異が見られるトミヨについて,昨年度にEdar上の候補原因変異のゲノム編集を行っていた.それらの個体を確認したところ,一部個体で鱗板のみが欠損しており,この変異が原因変異であることが強く支持された.興味深いことにこれらの個体は鱗板以外の表現型に大きな変異は見られなかった一方で,これまでにEdarのエクソンをノックアウトした場合には鱗板に加えて鰭などの他の形質にも影響が出ていた.以上からトミヨの鱗板変異の候補遺伝子は鱗板枚数のみを調節するシス調節領域に入っていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イトヨの家系作製とトミヨのゲノム編集実験が当初目標としていた点まで達成したため.特にトミヨの鱗板編員の原因変異をゲノム編集で検証できた点が大きな進捗といえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の研究を実施する. まずイトヨについて,今年度作製した鱗板完全型と欠損型のF1から多数のF2を作製する.1000個体を目標とするが,可能な限り多く作製する.作製したF2で鱗板枚数に関するQTLマッピングを行い,鱗板枚数変異の候補原因領域を絞り込む.次に育成しているEdarのゲノム編集個体の形態を観察してどのような形質に変異が入っているかを明らかにすることで,Edar遺伝子の多面発現効果を明らかにする. トミヨについては,現状Edar上の候補原因変異のノックアウトで表現型への効果が観察されたのは2個体に留まる.そこでより多くの個体について再度ゲノム編集を行うことでサンプル数を増やす.またこれらの個体を交配させることでノックアウト領域をホモで持つ個体を作製する.
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