適応進化に使用される遺伝子や変異は予測可能だろうか?収斂進化は類似した選択圧のもと類似した形質が独立に進化する現象である.収斂進化に使用される遺伝子は特定のものにバイアスする場合が多く見られる.このバイアスを引き起こす要因こそが,適応進化の遺伝的基盤を決める要因と考えられる.本研究では,トゲウオ科魚類で確認されている,鱗の枚数減少の収斂進化の遺伝的基盤を対象とする.この適応進化においてホットスポット遺伝子やホットスポット変異が生じる要因を,特に集団構造と多面発現効果に着目して解明する. 本年度は以下の内容を実施した.まずトゲウオ科のイトヨについてQTLマッピングによりEdarとEdaの原因変異を詳細な領域に絞り込むために,昨年度に作成したF1からF2を多数(1000~2000個体)産出することに成功した.一部の個体はすでに鱗板を観察し,鱗板枚数にばらつきがあることを確認した.現在は鱗板が完成する32mmに成長するのを待っている段階であり,その後にQTLマッピングを行う予定である. イトヨと同様に鱗板変異が見られるトミヨについて,昨年度にEdar上の候補原因変異のゲノム編集を行っていた.昨年度に候補原因領域をCRISPRで欠損させたところ,鱗板を欠損した個体が得られていた.しかし変異を示した個体の数が限られていたため,今年度はこれらのノックアウト個体を追加で作出した.これらのノックアウト個体は現在生育中であり,成熟後に原因領域に変異が入った個体同士を掛け合わせ,ホモの次世代を作出する予定である.
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