研究課題/領域番号 |
21H02543
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
隅山 健太 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00370114)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エンハンサー / 進化 / Dlx遺伝子 |
研究実績の概要 |
2021年度はDlx3-4遺伝子クラスターおよびDlx5-6遺伝子クラスターの構造の類似性に注目し、CTCFによる長距離ゲノム領域間でのループ形成などによって物理的にプロモーターと近くなる領域のクラスター間での構造的類似性および鰓弓でのエンハンサー活性の強さから、Dlx3-4遺伝子クラスターではTAD3エンハンサーおよび遺伝子間領域のI37-2エンハンサー、Dlx5-6遺伝子クラスターではDlx56pエンハンサーをそれぞれターゲットとして選定し、エンハンサーノックアウトマウスをCRISPR/Cas9で作製し系統化した。このマウスを用いて、正確にエンハンサー欠失の発現量変化を定量できるAccu-cis法を用いてRNA-seq結果から鰓弓発現に及ぼすその影響を評価した。約80kbほどDlx4遺伝子から離れたTAD3エンハンサー欠失では鰓弓発現が約50%低下した。またI37-2単独欠失では約65%の低下、I37-2を含むDlx3-4遺伝子間領域全体の欠失では約85%の低下がそれぞれ見られた。I37-2とTAD3両者を含む79kbの大規模欠失マウスでは鰓弓発現量は約80%の低下となり、鰓弓の発現は複数のエンハンサーによる単純な加算的な効果ではない複雑な制御によることが明らかになった。また、Dlx56p欠失マウスでは下顎が上顎化する顕著な表現型が観察され、このエンハンサー単独で非常に大きな効果を下顎特異的に示すことが明らかとなった。現在Accu-cisによる定量データが得られ始めているところである。さらにDlx56pをDlx3-4遺伝子クラスターにノックインしたノックインマウスの定量解析も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要な各種エンハンサー欠失マウスは順調に準備が進んでいる。Accu-cis法のために必要な人工的にDlx遺伝子コード領域にSNPを導入したマウスの準備も完了しており、現在順次エンハンサー欠失マウスの発現量変化の定量測定を進めているところである。現在並行してエンハンサーノックインマウスの準備も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
準備は概ね順調で、特に問題となっていることはないが、今後より一層迅速なノックアウトマウス作製・表現型評価方法の開発を進めることがより望ましいと考える。また今回のDlx56pエンハンサー欠損マウスで影響が出る細胞群以外のDlx5-6発現細胞の混入が定量解析の問題となることから、鰓弓組織のバルク解析だけでなく1細胞解析手法を取り入れるなどして特定細胞群で起きている顕著な変化を的確に捉える工夫を行いたい。Dlx5-6遺伝子クラスターでの鰓弓発現に最も大きな影響を与えるエンハンサーを同定できたことで、その配列解析から上流因子の同定につなげることが可能であり、今後その解析実験を進めていく予定である。
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