研究課題/領域番号 |
21H02553
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 敏弘 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70392537)
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研究分担者 |
中村 英人 北海道大学, 理学研究院, 助教 (00785123)
小松 俊文 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (40336201)
藤浪 理恵子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (40580725)
LEGRAND Julien 静岡大学, 理学部, 助教 (60737534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小葉類 / 根 / 担根体 / 光合成 |
研究実績の概要 |
ヒカゲノカズラにおいて、茎から内生的に生じたばかりの根(初生根)は緑色であるのに対し、初生根が複数回分枝して生じた後生根は白色である。つまり、初生根は茎的な性質である光合成能力を保持しているのかもしれない。本研究ではこの可能性を検証するため、ヒカゲノカズラの初生根と後生根とで、葉緑体の自家蛍光を観察するとともに、クロロフィル蛍光測定により光合成活性を評価した。その結果、初生根は発達した葉緑体を持ち、十分な光合成活性を持つことが明らかとなった。しかし、後生根では葉緑体が発達せず、光合成活性も持たなかった。この結果は「ヒカゲノカズラの”根”は発生初期に茎と同じ機能を持つものの、発生の進行とともに茎的な機能が失われていく」ことを示唆した。 現生小葉類3科のうち、イワヒバ科とミズニラ科は担根体とよばれる器官を持つ。最近、イワヒバ科において担根体の発生学的解析が盛んに行われ、担根体が根と茎との中間的な性質を持つことが明らかとなった。ミズニラ科の担根体については発生学的解析が進んでいないが、化石記録からイワヒバ科の担根体との相同性が指摘されている。これまで、残るヒカゲノカズラ科は、担根体を持たないと考えられてきた。本研究の結果は、ヒカゲノカズラ科の初生根が担根体と比較し得る器官であることを初めて示唆した。一方、後生根はイワヒバ科やミズニラ科の根と比較されるのかもしれない。 本研究では、初期の小葉類化石を探索するため、ベトナム北部において野外調査を行なった。野外調査で得たサンプルについては、日本に輸送し、分類学的検討を行なっている。また、サンプルの年代を決定する上で重要な微化石解析を行い、その成果について論文として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究分担者が不測の怪我により、入院し外出が困難となったため、ベトナムに渡航して調査することができなくなった。ベトナム調査は予定を繰り下げて実施することとなったが、その分、当初予定よりも研究全体の進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査の遅れにより、化石に基づく小葉類の根の起源の推定は予定通り進んでいない。一方、本研究では、現生植物の観察に基づき、ヒカゲノカズラが「(真の根のほかに)根と茎との中間的器官」を持つことを新発見した。この発見は、本研究の大目的である「小葉類の根が茎から進化した」ことを示す上でのブレークスルーとなる可能性がある。研究開始当初に予想していなかった本発見により、進捗の遅れを挽回できるものと予想している。
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