Csf1シグナル経路の活性の増加は、病原菌への抵抗力やマクロファージ機能を向上させることが知られている。前年度の結果から示唆されたCsf1シグナル経路とオレンジスポットとの関係と併せると、オレンジスポットはCsf1シグナル経路の活性の反映を介して免疫力の指標として機能する可能性が考えられる。そこでCsf1シグナルと免疫力との関係を明らかにするため、シグナル活性の阻害がグラム陰性細菌の細胞壁成分であるLPSへの生体防御反応に与える影響を調査した。まず、Csf1シグナル阻害剤あるいはコントロールとしてジメチルスルホキシドで成熟したオスに2週間の処理を行った。その後それぞれの処理群の半数の飼育水にLPSを溶解することで6時間刺激を与え、皮膚の遺伝子発現をRNA-seqで測定した。Csf1阻害剤処理群あるいはコントロール群のいずれかでのみLPS刺激時に発現量が変化する遺伝子の中で、LPS刺激下での発現量がCsf1阻害剤処理によって変化する遺伝子に注目し、既知の機能を確認した。その結果、LPS刺激時にコントロール群では活性酸素やアポトーシスの減少に機能する遺伝子の発現が増加することに対し、Csf1阻害群では活性酸素等に応答してアポトーシスを誘導する遺伝子の発現が増加していた。このことから、Csf1シグナル経路は生体防御反応時の過剰な活性酸素産生を抑制することが推定される。過剰な活性酸素は直接組織を損傷させるだけでなく、免疫細胞のアポトーシスや活性阻害を誘導することから、Csf1シグナル経路は免疫細胞の機能向上にはたらく可能性が考えられる。
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