研究課題/領域番号 |
21H02566
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高見 泰興 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60432358)
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研究分担者 |
小笠原 道生 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (00343088)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 交尾器形態 / 種分化 / エボデボ |
研究実績の概要 |
本研究は,交雑に起因する交尾器形態の分化と,それに伴う種分化の過程を検証する.交尾器形態の違いが機械的生殖隔離をもたらすオオオサムシ類について,これまで進められてきた研究をさらに発展させ,種分化過程における交尾器形態とゲノムの分化機構と,形態の遺伝発生学的基盤を明らかにすることを目的とする. (1)種間交雑に伴う形態とゲノムの分化機構の解明: 他種と接触し交尾器形態に形質置換が見られる複数の個体群において,より種間差の大きい形態変異が,個体レベルでは種間交尾のコスト(交尾器の損傷,交尾時間のロス)を低減しうるが,集団レベルではそうではないことを明らかにした.これは,生殖的形質置換の一要因であるテンプルトン効果に対する反証である.さらに,交尾器形態の形質置換によって生じた種内の地理的変異のレベルでも,集団間の生殖隔離が生じつつあることを明らかにした.これは,カスケード強化仮説の希有な実証例となった.また,比較ゲノム解析のためのサンプリングを行い,ゲノムシーケンスデータを蓄積した.
(2)遺伝発生学的基盤の解明: 交尾器の文化が著しい近縁3種の交尾器サイズに関与する,機能的,遺伝的,構造的制約を,形態測定値の変異から解析し,ドウキョウオサムシの最も巨大な交尾器は,機能的制約の緩和によってもたらされ,構造的制約に達していることを明らかにした.最も巨大化した交尾器を持つドウキョウオサムシの発生過程を,マイクロCTにより解析し,雄交尾器に関わる構造的制約を回避する折畳み構造を発見した.また,in situ hybridizationの実験系がほぼ完成し,発生段階のサンプルも揃ったことから,実際の解析を始められる段階に至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動実験による自然淘汰の検出については,交尾器形態の進化と生殖隔離の強化に関する新たな知見を2報発表し,形態進化に関与する淘汰要因とその帰結の全貌が明らかになってきた. 比較ゲノミクスについては,ほぼ全てのデータを取り終え,解析を進めつつある. 交尾器形態の発生過程の把握については,ほぼ全てのデータを取り終え,解析と論文執筆の段階にある. in situ hybridizationによる遺伝子発現解析については,サンプルの取得と解析プロトコルがほぼ完成した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は,これまで取得したデータの論文化に注力すると共に,以下の点をさらに進める. ・比較ゲノミクス解析: 側所的に分布する姉妹種の分布域を網羅するデータを取得できたため,集団ゲノミクス解析を進めて,領域ごとの遺伝的分化の評価と,分化が維持されている領域の特徴づけを行う. ・in situ hybridizationによる遺伝子発現解析: これまでに得られたサンプルを,開発したプロトコルで解析開始する.そのために必要な器具を揃える.
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