海馬における記憶の痕跡の研究は、国際的に数多くの研究室において様々なアプローチを 用いて行われている。近年では、記憶の物理的痕跡を宿した神経細胞群として記憶エングラムが同定され、それらの活動が記憶に必要かつ十分であることが示された。記憶エングラムから直接活動を記録して、その情報保存の基本ルールを解明する試みは申請者が2018年に初めて行った。ところが、その結果は予想に反するものであり、本来安定であるべき記憶の表象が不安定であることの意義とそのメカニズムは、記憶研究におけるもっとも重要な問題であると考えられる。 本研究成果は、その問いに直接答えるという意味において、学術的価値が高いと自負している。
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