研究課題/領域番号 |
21H02586
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
久保 郁 国立遺伝学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 特命准教授 (40786373)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / オプティックフロー / 視覚情報処理 / 前視蓋 |
研究実績の概要 |
第一に、前視蓋クラスターに存在する神経細胞がオプティックフロー依存的な行動を引き起こすハブとして働くかどうかを明らかにするために、前視蓋クラスターを標識する新規Gal4系統を用いて光遺伝学的に局所的に活性化させる実験を行なった。長波長シフトした光遺伝学アクチュエータであるChrimsonやChRmineにより神経活動を人為的に活性化し、同時に蛍光緑色域においてGCaMPによる神経活動のイメージングを行うために、Digital Micromirror Device (DMD)システムを導入した。前視蓋クラスター神経細胞でChrimsonを発現し、さらに神経系全体でGCaMPを発現するゼブラフィッシュ仔魚を作出し、DMDによりこれらの細胞を光刺激したところ、Chrimson発現細胞において神経活動の活性化が観察されたことから、この系を用いて神経活動活性化を引き起こすことができることが確認できた。さらに、Chrimson非発現細胞においても神経活動が活性化されたことから、光遺伝学的な神経活性化からネットワーク活動が引き起こされたことが示唆された。
第二に、前視蓋クラスター神経細胞が、脳内においてどのような神経配線を展開しているかを明らかにするために、前視蓋クラスターGal4系統で標識される細胞の神経投射パターンの解析を行なった。前視蓋クラスターの単一神経細胞を赤色蛍光タンパク質で可視化し、その神経投射パターンを解析すると同時に、共発現させたGCaMPによってオプティックフロー刺激に対する応答性を解析した。さらに、画像レジストレーション技術ANTsを用いて、異なる個体から得られた神経投射パターンを同一座標上で比較した。その結果、前視蓋クラスター神経細胞は主に局所的な回路が形成しているが、一部の神経細胞は前視蓋以外の領域にも投射することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに光刺激と同時に二光子カルシウムイメージングを行う実験系を確立し、これを用いて神経細胞の光遺伝学的な活性化に成功しており、当初の計画通り順調に進展していると言える。次年度は、この光刺激装置を用いて、前視蓋クラスター細胞の光遺伝学活性化を行うことにより、これらの細胞がオプティックフロー依存的な行動に関与するかどうか調べる予定である。解剖学的アプローチにおいては、単一神経細胞レベルでの神経投射データ取得を完了することができた。さらに、異なる個体から得られた神経投射データを共通の座標軸上にレジストレーションする技術も確立することができた。これらの解析の結果、前視蓋クラスター細胞群には、オプティックフローに対する反応性が異なるサブタイプが存在し、それらは局所的に神経投射していることが分かり、神経細胞同士が互いに神経接続している可能性が示唆された。これらの結果から、前視蓋クラスター細胞の神経回路モデルに関して新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した光刺激装置を用いて、前視蓋クラスター細胞の光遺伝学的活性化の実験を進める。第一に、これまでに確立した光活性化と二光子カルシウムイメージングを組み合わせるall-opticalアプローチを用いて、前視蓋クラスター細胞の活性化によって全脳の神経細胞がどのように活性化するのか解析を進める。第二に、前視蓋クラスター細胞の活性化により、オプティックフロー依存的な行動が惹起されるか解析する。 解剖学的解析については、この解析から明らかになった「相互神経接続」に関するモデルを検証する。そのために、光刺激装置を用いて、2つの細胞群のうち一方のみの細胞群の神経活動を活性化させた際、他方の細胞群が活性化(あるいは抑制)されるかを調べる。
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