研究課題/領域番号 |
21H02601
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 英利 東北大学, 薬学研究科, 教授 (00282608)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全合成 / アルカロイド / 酸化 / 二量化 / カスケード反応 |
研究実績の概要 |
まず、合成終盤における酸化的官能基化(Late-Stage Oxidative Functionalization, 以下LSOF)戦略による酸化的N,Sアセタール形成を鍵とするディスコハブディン類の網羅的全合成については、カスケード型の酸化的N,Sアセタール形成反応を検討した。その結果、銅試薬を用いた条件を見出すことができ、ディスコハブディンBの基本骨格を有するラセミ化合物の構築に成功した。その後の変換によりN,Sアセタールを有するディスコハブディンBのラセミ全合成を達成することができた。さらに、不斉補助基を導入することで、不斉スピロ環化反応への拡張を検討したが、満足できる結果は今のところ得られていない。 生体酵素模倣型鉄触媒を用いたLSOF戦略による天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成のテーマについては、鉄フタロシアニン錯体を触媒として用いた酸素をバルク酸化剤とするフェノールの酸化的二量化反応の開発とそれを応用した二量型天然物の全合成研究に取り組んだ。今年度は、フェノール類の酸化的二量化条件の反応条件最適化を行い、その条件を用いて合成最終段階でのフェノールの二量化を経た、天然物ミケレアミンA、ビスジャトロリジン、および、ジカプサイシンなどの様々な二量体型天然物の収束的全合成を達成することができた。 LSOF戦略によるユズリハアルカロイドの網羅的全合成のテーマにおいては、鍵工程として設定した酸化的脱芳香環化反応/分子内[5+2]環化付加反応を含むカスケード反応の基礎的検討を行うため、芳香環を有する左ユニットとジエンを含む右ユニットとをTsuji-Trost反応によるカップリングすることで、基質の合成を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、合成終盤における酸化的官能基化(Late-Stage Oxidative Functionalization, 以下LSOF)戦略による酸化的N,Sアセタール形成を鍵とするディスコハブディン類の網羅的全合成については、当初計画した鍵反応が進行することがわかり、反応条件を最適化することで、良好な収率で目的のN,S-アセタールを有するスピロ環化生成物を得ることに成功した。さらに、本反応を鍵工程として、ディスコハブディンBの世界初のラセミ全合成を達成することができた点は評価できる。生体酵素模倣型鉄触媒を用いたLSOF戦略による天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成に関しては、フェノール構造を有する多様な二量体型天然物の収束的合成を目指した。これまでに、鉄フタロシアニン触媒を用いた酸素酸化によるフェノールの二量化反応の開発に成功している。本年度の研究成果により、本手法は合成最終段階での二量化に適用可能な高い化学選択性を有していることわかり、ミケレアミンAやビスジャトロリジン、ジカプサイシンなどの収束的全合成を達成した。現在、ディスペアトリンの収束的合成法の確立に向け、その単量体ユニットの新規合成法の開発に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
合成終盤における酸化的官能基化(Late-Stage Oxidative Functionalization, 以下LSOF)戦略による酸化的N,Sアセタール形成を鍵とするディスコハブディン類の網羅的全合成については、確立した酸化的N,Sアセタール形成を不斉反応へと適用すべく、添加剤、不斉補助基、さらなる不斉触媒の添加など多面的に検討することが必要である。生体酵素模倣型鉄触媒を用いたLSOF戦略による天然・非天然二量体型アルカロイドの網羅的全合成に関しては、今年度に引き続きディスペアトリンの合成研究を行う。まず、光触媒を用いたラジカル環化反応と続くアザPrins反応を鍵反応として用いて、単量体ユニットを合成する。その後、独自に開発した鉄フタロシアニン錯体を触媒として用いた酸素雰囲気下での酸化反応を、上記にて合成した単量体ユニットに適用し、ディスペアトリンの収束的全合成を達成する。さらに、昨年実現できなかったヒドロキシフランやカルバゾール等の二量化を実現するべく、詳細な反応条件のさらなる検討を行う。LSOF戦略によるユズリハアルカロイドの網羅的全合成に関しては、今年度に引き続き標的化合物に含まれる6,7,5,5員環が高度に縮環したカゴ状骨格の構築を目指す。本年度、Tsuji-Trost反応を用いた芳香環を有する左ユニットとジエンを含む右ユニットとのカップリング法を確立したため、次年度は、酸化的脱芳香環化反応/分子内[5+2]環化付加反応カスケード反応の詳細な検討を行い、7員環を含む5環性骨格の新規構築法の確立を目指す。
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