研究課題/領域番号 |
21H02605
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 周司 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (60192457)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リパーゼ / バナジウム / 光学分割 / 軸不斉ビアリール化合物 / 不斉合成 / クロスカップリング |
研究実績の概要 |
酵素は常温常圧で極めて高い化学・立体選択性,触媒回転率を示し,発酵で自然から生まれ,分解されて自然に帰るため,環境低負荷で再生可能な触媒として期待が高い。しかし,有機合成への利用は限定的であった。そこで我々は,近年発展著しい遷移金属と酵素を同時利用して,両者の利点を生かした新しい変換や,単独の触媒では成しえない難易度の高い変換の開拓を目指して研究を行ってきた。本課題研究では,これまでの成果を更に発展させ、医農薬として重要な光学的に純粋な低分子化合物の、持続可能な(枯渇しない)環境低負荷の触媒的不斉合成法の開発を目的とする。本年度は以下の成果を得た。 1.光学活性な軸不斉ビアリール化合物のワンポット不斉構築: オキソバナジウムをメソポーラスシリカ(MPS)の細孔内表面に共有結合で固定化した不均一系触媒V-MPS4を10mol%(バナジウムの当量)用いて、3-ヒドロキシカルバゾール類と求核性芳香族化合物の等モル混合物のクロスカップリング反応を開発した。本法によって,高い化学選択性と位置選択性で対応するビアリール化合物が高収率で得られた。また,V-MPS4は回収再利用できた。次いで,本法で得たラセミ体のカップリング生成物を,リパーゼ触媒光学分割によって光学活性体へと変換した。さらに,この2工程をワンポットで連続して実施し,光学活性なビアリール化合物の簡便合成に成功した。 2.光学活性な脂肪族多環式分子の不斉構築: 入手容易なラセミ体アルコールを原料として、ジエノフィル部位を有するアシル化剤を用いてリパーゼ触媒速度論的光学分割と分子内環化の反応によって脂肪族多環式分子の不斉構築を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軸不斉ビアリールのワンポット不斉構築を実施している際に、反応中間生成物の収率が悪いことが判明し、このために軸不斉ビアリール体の収率低下をもたらした。その原因解明を行ったために、当初計画の一部が翌年度にずれ込んだが、最終的には目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
第3級アルコールの動的速度論的光学分割、光学活性な軸不斉ビアリール化合物の不斉構築の適用拡張、光学活性な脂肪族多環式分子のワンポット不斉構築などを推進する。
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