研究課題/領域番号 |
21H02608
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
石川 勇人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80453827)
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研究分担者 |
塚本 佐知子 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 教授 (40192190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セコロガニン / バイオインスパイアード反応 / 集団的全合成 / 中分子天然物 / ストリクトシジン |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者がすでに効率的な全合成を達成したセコロガニンを出発物質として、植物生合成に倣い樹形図的に様々な骨格を有するアルカロイドやイリドイド配糖体を合成し、その中から次世代の医薬品候補を見出すことを目的としている。令和3年度はセコロガニンアグリコンを合成し、シアノトリプタミンとのPictet-Spenlar反応を行って、樹形図型全合成の鍵中間体となるストリクトシジンアグリコンをグラムスケールで合成した。このストリクトシジンアグリコンの一部を改変し、引き続くシリル基の除去をトリガーとするバイオインスパイアード骨格変換反応(生合成模倣反応)を開発した。その結果、異なる骨格を持つ植物由来のモノテルペノイドインドールアルカロイド13種の全合成を達成した。いずれの合成も13段階以下の全合成であり、極めて効率的と言える。本合成は令和3年度中に論文として発表した。また、合成したアルカロイド類は医薬候補化合物へと昇華するため、現在生物活性スクリーニングを行っている。さらに、本合成計画における標的天然物の植物からの単離研究も同時に進め、アカネ科植物Adina Rubescensより新規アルカロイド1種を単離し、全合成と合わせて論文として報告した。一方、漢方薬「続断」として知られるDipsacus asperより見出されたオリゴマー化したイリドイド配糖体の網羅的全合成を行った。合成したセコロガニンを利用し、中分子領域に属する最大四量体までのイリドイド配糖体を合計6種全合成した。いずれも12段階以下の合成である。合成した天然物群は、生薬の伝統的な利用を鑑みて、骨粗鬆症の治療への応用が期待される破骨細胞膜融合阻害活性試験に付した。その結果、中分子領域に属する3種のオリゴマー型天然物に強力な活性を見出した。生薬の活性成分の一部を特定できたと考えている。現在論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していたDipsacus Asper由来のオリゴマー型のイリドイド配糖体の集団的全合成を達成し、生薬の効能を裏付けるような生物活性を見出すことができた(現在論文準備中)。また、アルカロイド合成においても、新たに立ち上げたリコポジウムアルカロイド合成も含めて、15種のアルカロイドを網羅的に全合成することに成功した。単離研究も合わせて、令和3年度内に論文3報にまとめることができた。加えて、樹形図型のインドール合成研究において重要となる、合成終盤でのインドール環化学修飾法を開発するための先駆的知見を数多く得ることができた。この成果により、当初の計画には無かった新規性の高い手法を計画に取り入れることが可能となる。以上の理由により、「当初の計画以上に進展している」とさせて頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
計画していたDipsacus asper由来のイリドイド配糖体の全合成は達成したが、合成研究の中で未だ単離されていない多量体が存在すると確信した。従って、基原植物を手に入れて、新規イリドイドの探索研究を行う。新規イリドイド配糖体を発見した暁には、すぐに全合成研究へ取り掛かる。一方、モノテルペノイドインドールアルカロイドの全合成研究では、計画通り、もう一つの生合成鍵中間体であるガイソシジンの全合成を進め、さらにその先の多様な骨格を創出するバイオインスパイアード反応を開発し、網羅的な全合成を進める。加えて、インドール環の新しい化学修飾反応の開発を行い、計算科学による反応機構解析も併せて検討していく。合成する全ての天然物群は抗腫瘍(ユビキチン-プロテアソームシステムを標的とする各種評価、細胞周期阻害、細胞形態変化)、抗菌、抗HIV、抗アミロイド、抗骨粗鬆症、抗慢性腎臓疾患をはじめとする幅広い生物活性評価を行い、医薬シードへと昇華する。
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