研究課題/領域番号 |
21H02609
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
浅井 章良 静岡県立大学, 薬学研究院, 教授 (60381737)
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研究分担者 |
小郷 尚久 静岡県立大学, 薬学研究院, 講師 (20501307)
村岡 大輔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20608955)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 免疫チェックポイント / スクリーニング / ドラッグデザイン / PD-L1 / ドッキングシミュレーション / ハイブリッド化合物 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、低分子をベースとした複合がん免疫療法のための堅牢な創薬基盤を築くことを目的としている。本年度は、FCM法を基盤とした免疫チェックポイント分子結合アッセイパネルの構築を中心に行った。PD-1を高発現させた細胞株(Jurkat/NFAT-RE/PD-1細胞)を作製し、可溶性PD-L1および可溶性PD-L2との結合を高感度で検出する手法を確立した。またB7-1/B7-2およびMHC class IIを恒常的に発現するRaji細胞を用いることによって可溶性CTLA-4および可溶性LAG3の結合アッセイを、またCD155を発現するA549細胞を用いることによって可溶性TIGITの結合アッセイを各々構築した。さらにBTLAについては、HVEMを高発現させたRaji細胞株を作製し可溶性BTLAとの結合アッセイを構築した。いずれのアッセイ系においてもそのシグナルを各因子やリガンドに対する抗体が濃度依存的に結合を阻害することから、阻害化合物探索のためのアッセイ系として有用であることを確認し、一部スクリーニングを実施中である。また二次評価系に用いる各種遺伝子導入株を作製した。PD-L1阻害化合物探索の目的で、複数のアプローチによるバーチャルスクリーニングによって、PD-1とPD-L1の結合を特異的に阻害する新たなヒット化合物を同定した。既に合成法を確立しているPD-L1リガンドの評価を行い、nMオーダーの強力かつ特異的なPD-L1阻害活性を有することを明らかとした。本化合物については、PD-L1遺伝子とTCR activator 遺伝子を一過性に導入したHEK293細胞とJurkat/NFAT-RE/PD-1細胞の共培養下でルシフェラーゼレポーター活性を測定することによって化合物の免疫抑制解除機能を検証した。現在リンカーを介したハイブリッド化合物の合成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、1)免疫チェックポイント分子結合アッセイパネルの確立とスクリーニング、2)複合的機能を有する新規PD-L1阻害化合物のインシリコデザインと創製に注力して研究を進めた。FCM法をベースとした結合アッセイアッセイパネルについては、標的としている負の共刺激因子を恒常的に発現している細胞株を選択、または高発現株の調製によって、高感度なアッセイ系の確立に成功した。これまでに、PD-1とPD-L1/PD-L2、CTLA-4とB7-1/B7-2、LAG3とMHC class II、TIGITとCD155、BTLAとHVEMの相互作用を高感度で検出可能なアッセイ系の構築に成功し、その一部についてはバーチャルスクリーニングとの組み合わせによる化合物スクリーニングを開始することができた。さらに二次評価系として、上記チェックポイント分子を介したT細胞抑制作用の化合物による解除を簡便に評価可能な各種レポーターアッセイ系の構築について検討中である。CTLA-4阻害化合物探索の二次評価系として、CTLA-4高発現Jurkat細胞とTCR activator (TCRa) 高発現Raji細胞を各々クローンとして作製し、共刺激アッセイによって機能を確認することによって有用性を検証済である。既に合成法を確立しているPD-L1リガンドの評価を行い、nMオーダーの強力かつ特異的なPD-L1阻害活性を有することを明らかとした。本化合物については、PD-L1遺伝子とTCRa遺伝子を一過性に導入したHEK293細胞とJurkat/NFAT-RE/PD-1細胞の共培養下でルシフェラーゼレポーター活性を測定することによって化合物の免疫抑制解除機能を検証することができた。現在リンカーを介したハイブリッド化合物のデザインと合成を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に確立した免疫チェックポイント分子結合アッセイパネルとバーチャルスクリーニングを組合わることによって効率的なスクリーニングを実施し、新たなヒット化合物の同定を目指す。さらに二次評価系として、上記チェックポイント分子を介したT細胞抑制作用の化合物による解除を簡便に評価可能な各種レポーターアッセイ系の構築についても計画している。免疫チェックポイント分子の中で低分子阻害薬探索が進んでいるPD-1/PD-L1阻害物質にPEGリンカーを導入した化合物の合成と評価、さらにドッキングモデルによる詳細な阻害効果の検証を前年度までに実施してきた。現在これらの知見を活かして、今年度はPEGリンカー末端に異なる機能を有する低分子化合物を連結させたハイブリット型化合物の合成を実施中である。本課題では連結化合物の候補として、①強力な細胞障害性化合物、②免疫逃避機構を標的とした化合物、などを候補としており、①に関しては、これまでに研究代表者らが創製してきた強力な殺細胞活性化合物を用いている。これまでの研究から得られた構造活性相関、さらに標的タンパク質とのドッキング解析から個々の阻害活性に影響を与えない部位を特定することによって効果的な作用が期待できる化合物のデザインを進める。これらの解析結果を踏まえて細胞障害性化合物との連結を実施予定である。今年度はこれらハイブリッド化合物の合成を完了させ、上記免疫チェックポイント分子結合アッセイパネルを用いた評価、及びハイブリッド化合物としての機能評価を実施予定である。具体的にはPD-1との結合阻害に加えてPD-L1のインターナリゼイションを介したがん細胞やM2マクロファージ選択的殺細胞作用をについて評価予定であり、現在評価方法のセットアップを準備中である。
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