研究実績の概要 |
カルコゲン結合は、カルコゲン元素とヘテロ原子との間に働く非共有結合性の相互作用である。前年度までに、カルコゲン結合がウレアの構造制御に有効なことを明らかにすることができた。すなわち、ベンゾチオフェンやベンゾセレノフェン部を持つウレア誘導体では、カルコゲン結合がカルボニル酸素の両側に形成され、X…O…X (X = S, Se) が直線状に並び、かつ平面性の高い立体構造に制御されることを明らかにした。今年度は、カルコゲン結合による基質認識が期待されるロジウム触媒や、カルコゲン結合で配座制御されたウレア型遷移金属触媒の創製研究を実施し、下記の結果を得た。
(1)カルコゲン結合を介した2座でのヘテロ原子の認識が可能なベンゾジチオフェン (BDT) 基を持つ基質認識型ロジウム触媒を合成した。このものを用いて、ジアゾ化合物による糖類の水酸基選択的アルキル化を検討した。2,3 位の水酸基がフリーのガラクトース誘導体を基質として用いた場合、3 位水酸基選択的にアルキル化が進行がすることがわかった。
(2)カルコゲン結合で配座制御されたウレアに、触媒活性部としてビピリジル-イリジウム錯体を付したウレア触媒を合成を達成した。X 線結晶構造解析から、ビピリジル部が NH 基側に配向する立体構造を明らかにすることができた。
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