研究課題/領域番号 |
21H02614
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
清水 広介 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (30423841)
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研究分担者 |
間賀田 泰寛 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (20209399)
山岸 覚 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40372362)
福田 敦夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50254272)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患治療 / 重症筋無力症 / 自己抗原修飾リポソーム / アセチルコリン受容体 / Chrna1 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患治療に向け、自己抗原修飾リポソームを薬物キャリアとして用いる治療戦略を重症筋無力症(MG)へと応用して治療を行うことを目的として、その治療薬となる自己抗原修飾リポソームの調製およびリポソームの特性評価を行った。リポソーム表面に修飾する自己抗原としては、MG発症の原因となる自己抗原の一つとしても知られ、MG患者の血液中にも自己抗体が確認されている、アセチルコリン受容体αサブユニット(Chrna1)の部分ペプチド(21から230番目のアミノ酸で構成された 210残基)を用いた。リポソームへの修飾については、ペプチドのN末端に6 x Hisを含むことから、Ni-NTA脂質誘導体(18:1DGS-NTA(Ni))をリンカー分子として用いる方法を新たに採用し、薄膜法を用いて18:1DGS-NTA(Ni)含有リポソームを調製し、エクストルーダーを用いた粒子径調整後、Chrna1分子と混合することで調製した。動的光散乱法による測定の結果、調製したChrna1修飾リポソームは平均粒子径が150 nm程度であり、透過型電子顕微鏡による観察の結果、球形粒子であることを確認した。リポソーム表面のChrna1分子の修飾および抗体への結合親和性を確認するため、コントロール抗体または抗Chrna1抗体を固定したウェルに対する蛍光標識Chrna1修飾リポソームの結合を調べたところ、未修飾の18:1DGS-NTA(Ni)含有リポソームはコントロール抗体および抗Chrna1抗体への結合は同程度であったのに対し、Chrna1修飾リポソームはコントロール抗体に比べ抗Chrna1抗体への結合が高くなることを確認した。 これらの結果より、本研究期間においてMG治療に向けた自己抗原修飾リポソームの開発に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究計画は、MG治療に向けた自己抗原修飾リポソームの調製法を確立することを目的としており、結果として表面にMGの原因となる自己抗原を修飾したChrna1修飾リポソームの調製に成功し、その標的性(特異抗体への結合特異性)についても確認できている。また新たに導入したHPLCシステムにより、Chrna1の定量法も確立している。 一方、本研究の治療戦略である自己抗原修飾リポソームを用いた自己免疫疾患治療について、多発性硬化症モデルの実験的自己免疫性脳脊髄炎に対する治療効果を明らかにした研究成果が、学術雑誌(Journal of Controlled Release)に論文掲載され、またその技術について製剤技術専門誌(PHARM TECH JAPAN)にも掲載された。本治療戦略のMGへの応用が十分期待できるエビデンスを増やしており、目標達成に向けて研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究計画は、調製法を確立したChrna1修飾リポソームを用いて、MGモデルである実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)マウスに対する治療効果を明らかとする。治療効果としては、マウスの運動機能障害、握力障害、筋電図変化、神経伝達障害に対する改善効果を調べる。またChrna1修飾リポソームの標的組織となる脾臓におけるリポソームの集積や分布、免疫細胞との局在を調べることで、自己抗原認識免疫細胞へのChrna1修飾リポソームの標的性を明らかとし、治療効果のメカニズムを解明する。
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