研究実績の概要 |
昨年度までに帰属を行ったロイシン残基のアミド基由来シグナル、アラニン残基のメチル基由来シグナル、メチオニン残基のメチル基由来シグナルの解析の結果、バランスリガンドであるisoproterenol結合状態とアレスチンバイアスリガンドであるisoetharine結合状態ではリガンド結合部近傍および細胞内側の残基に化学シフト差が観測され、isoetharineは、リガンド結合部、膜貫通領域中央部、細胞内側領域に渡る分子全体の構造平衡をisoproterenol結合時とは変調することによってバイアスシグナル活性を発揮することが示された。また、isoetharineのエチル基との立体的衝突が予想されるF193をよりかさ高いトリプトファンに置換したF193W変異体について活性を測定したところ、isoproterenol結合状態においても、野生型のisoetharine結合状態と同程度のGタンパク質シグナル活性しか示さないことを明らかとしていた。今年度は、このF193W変異体について、isoproterenolとisoetharine結合状態におけるNMR解析を行った。その結果、野生型においてisoproterenol結合状態とisoetharine結合状態で化学シフト値の異なる細胞内側の残基A134とA226について、F193W変異体では、isoproterenol結合状態におけるA134とA226のシグナルの化学シフト値が、野生型のisoetharine結合状態におけるA134, A226の化学シフト値にそれぞれ近かったことから、F193とisoetharineのエチル基の立体的な衝突が、細胞内側の構造変化につながることが示された。
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