研究課題
生体や細胞は、内外環境ストレスの種類・強さなどに応じて、ストレス応答シグナル分子へのユビキチン化等の多様な翻訳後修飾による制御を介して適切な応答を誘導し、恒常性を維持している。その破綻が癌等の多様な疾患の原因であるが、シグナル制御の場所や具体的なメカニズムは不明であった。本研究では、液-液相分離で形成される液滴様構造体が、ストレスの種類・強さの情報を集積する場所であると同時に、ストレスシグナルを発信し、細胞死・炎症などのストレス応答を誘導する起点となり、化学物質・薬剤の毒性発現や疾患発症に寄与することを見出し、ストレスの種類や量に応じた多彩な分子修飾を介して形成される液滴様構造体の制御機構、さらに神経変性疾患や癌等の疾患発症の分子機構・治療法の可能性を明らかにしてきた。具体的には、液滴様構造体の形成・制御機構として、例えば、酸化ストレスなどのストレスの種類や量が、その構造体の構成因子である多機能分子p62のリン酸化・ユビキチン化・ADPリボシル化といった翻訳後修飾の種類や量に反映されること、またp62の修飾部位や修飾を誘導するシグナル経路もストレスの種類や量に応じて異なることも分かってきた。同じリン酸化修飾であっても、異なるストレスによって活性化した、それぞれのキナーゼ分子が、異なる部位をリン酸化し、そのアウトプットとしての細胞死や炎症等のストレス応答も異なってくることが判明している。さらに、この液滴様構造体の形成が、神経変性疾患に関わる特殊な細胞死の誘導に重要であることも見出しており、実際に構造体の形成を阻害すると、神経変性の際に誘導されるような神経細胞死が抑制されたことから、ストレスによって形成される特殊な液滴様構造体が、神経変性疾患などの疾患の新たな創薬治療標的として重要であることも示した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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