研究課題/領域番号 |
21H02632
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
新田 淳美 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (20275093)
|
研究分担者 |
國井 泰人 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00511651)
浅野 昂志 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00884751)
有岡 祐子 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任講師 (10709497)
望月 貴年 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40263933)
泉尾 直孝 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50722261)
高雄 啓三 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (80420397)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 双極性障害 / 動物モデル / うつ / 躁 / マウス / iPS / 死後脳 |
研究実績の概要 |
双極性障害は、躁とうつを繰り返す疾病であり、自殺率も高く、完治も困難である。治療薬の開発が進まない理由として、1個体の中で、躁とうつを繰り返すモデルマウスが確立されていないことがある。大規模遺伝子解析において、他の精神疾患にない変異が存在する遺伝子として、ODZ4が見出された。そこで、応募者らは、ODZ4を脳の特定部位で減少させるマウスの作成を行った。RT-PCR法やウエスタンブロット法で発現量の減少を確認した。また、各種行動実験を行い、1個体の中で、明確なうつ状態と躁状態を観察できている。即ち、うつの状態として、シュクロース嗜好実験で、無快感(うつ病の典型的な症状)症状や、強制水泳実験で無動時間が延長していること、躁の状態として、新規物体をマウスケージに入れた直後の行動量の増加が観察されている。さらに、本マウスにおける睡眠障害の有無について検討を重ねている。また、iPS細胞や患者死後脳を活用して、双極性患者におけるODZ4の作用についても、興味深い結果を得ている。特に、iPSを用いた研究では、双極性障害の患者から得た細胞を神経細胞に分化させた時にODZ4の発現量が変化していることを見出している。今後は、本疾患の最も大きな問題である、躁転のメカニズムに迫ろうと考えている。そのために、脳内での器質的な変化の検討を開始している。本研究が進めば、双極性障害を再現したモデルマウスとなり、治療薬開発に繋がると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ODZ4の発現減少には、CRISPR-Cas9システムを利用した。AAVベクターへの組み込みを行いマウスの海馬や前頭前皮質への注入を行った。その結果、再現性よく、ODZ4のmRNA量やタンパク質量が脳の当該部位で減少したマウスが得られた。それらマウスを用いて、一連の行動実験を行ったところ、複数の試験方法で、うつ状態が観察された。また、同様に作成した別のマウスでは、行動量過多などの躁状態と考えられる行動変化が観察された。次に同一個体で、躁とうつ様の状況が観察されるようになった。本マウスの脳波を測定したところ、睡眠障害が観察され、双極性障害の患者と類字した表現形が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
双極性障害モデルマウスの作成がほぼ完了し、表面妥当性(face validity)の結果は得られている。構成妥当性 (construct validity) については、双極性障害の原因が分っていない現状では、基礎実験での追求は困難である。そこで、今後は、予測妥当性 (predictive validity) を追求する予定である。双極性障害の治療薬で、現在、観察されている表現形が抑制されるかの検討を行う。また、本マウスを用いて、躁転のメカニズム解明を行うために、躁転が再現性良く、観察される条件を検討する。
|