研究課題/領域番号 |
21H02633
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
杉本 幸彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (80243038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生理活性脂質 / 脂肪酸受容体 / カルボン酸 / GPCR / 多量体 / 細胞内シグナル伝達 / 逆作動薬 / バイアス型作動薬 |
研究実績の概要 |
プロスタグランジン(PG)は最も代表的な生理活性脂肪酸であり、GPCR受容体を介して多彩な作用を発揮する。本研究は、研究代表者がこれまでに得た予備的結果と最近解明されたPG受容体の結晶構造を基に、リガンドの負電荷カルボン酸と受容体の正電荷アルギニン(R)間のイオン結合が、安定的結合と二量体化を引き起こし、これがG蛋白質非依存性のβ-arrestin (βarr)活性化やヘテロ会合受容体の共役G蛋白質(ヘテロ)活性化を可能にするとの仮説を検証することで、脂肪酸リガンドに保存された受容体活性化機構の理解を目的とする。研究計画としては、①EP4受容体によるβarr活性化、②EP3受容体によるFP共役Gqのヘテロ活性化を解析の中心に据え、PGカルボン酸フリー/メチル体が野生型(WT)/RQ変異型受容体の二量体化に対して効力差があることを示し、リガンド-受容体間塩橋形成の寄与を調べる。内因性PG受容体による炎症作用をメチル体が回避することを示し、バイアス型作動薬や持続性作動薬の創出などに貢献する。他の脂質分子をリガンドとするGPCRについても検討し、本機構の普遍性を探る。 これまでに、カルボン酸結合部位であるPG受容体・第7膜貫通ドメインのArg残基の変異体RQ変異体を作出し、PGカルボン酸フリー体による①EP4受容体を介したβarr活性化、②EP3受容体を介したヘテロ活性化は、いずれも低下することを見出した。現在、WT/RQ変異のEP3/EP4受容体に対するPGカルボン酸フリー/メチル体の結合活性やG蛋白質活性化が大きく変わらないことを検証するとともに、ホモ多量体化やヘテロ多量体化へのRQ変異の影響を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に基づき、受容体の変異体を作出し、シグナル伝達様式は、予想通りの結果を得ている。すなわち、EP3またはEP4受容体について、カルボン酸結合部位である第7膜貫通ドメインのArg残基のRQ変異体を作出した。本変異体は、いずれもPGカルボン酸フリー体によるG蛋白質活性化は大きく変わらないが、①EP4受容体を介したβarr活性化、②EP3受容体を介したヘテロ活性化は、いずれも低下することを見出し、脂肪酸リガンド中のカルボン酸と受容体Arg残基のイオン結合が、βarr活性化やヘテロ活性化、ホモあるいはヘテロ二量体化に重要な役割を果たす可能性を見出しつつある。また他の脂質受容体として、カンナビノイド受容体CB1、CB2を入手し、そのシグナル系を確立した。さらに、CB1受容体によるオキシトシン受容体との共発現系を構築し、CB1受容体がオキシトシン受容体をヘテロ活性化することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、リガンド依存的な多量体化検出系を最適化中であり、本解析系が確立すれば、G蛋白質シグナル、βarrシグナル、ヘテロ受容体シグナル、の活性化を容易に解析できると考え、最も慎重かつ柔軟に検討を重ねている。最終年度へ向け、以下の1)と2)を進め、in vivoにおける脂肪酸受容体の多量体化の意義解明を目指す。 1)RQ変異受容体による二量体化とβarr(ヘテロ)活性化を評価する。またω鎖に二重結合をもつPGE3やα鎖二重結合の少ないPGE1の作用を評価する。 2)内因性PG受容体の評価:①MφでのTnf抑制(Gs活性が重要)、②CD4・TH1分化、③脂肪細胞Col6亢進でEP4作動薬フリー/メチルの作用を比較する。マウス妊娠子宮の平滑筋マグヌス解析でEP・FP作動薬フリー/メチルの作用を比較する。
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