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2021 年度 実績報告書

病原微生物の「浸潤進化」に学ぶ休眠遺伝子活性化と創薬シード分子の創製

研究課題

研究課題/領域番号 21H02639
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

荒井 緑  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40373261)

研究分担者 齋藤 駿  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20846117)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード天然物 / 休眠遺伝子 / 共培養 / マクロファージ / 免疫抑制作用 / 進化
研究実績の概要

放線菌や真菌は,多くの有用な化合物を提供してきた.しかしながらその遺伝子は2割程度しか働いておらず,新たな新規天然物を生産するであろう生合成遺伝子が眠ったままの休眠遺伝子であることがわかっている.我々は近年,病原放線菌と動物細胞の共培養法を開発し,休眠遺伝子活性化に成功している.この新規手法は,病原微生物が動物に感染する際の状況を再現し,疑似感染状態を模倣したもので,国内外でも初めての例であり独創的で新規性が高い.本研究では,本共培養法を病原真菌にも応用し,新たな共培養特異的化合物を見いだし,その生産機構に迫ることを目的とする.
千葉大学真菌医学研究センターが保有する臨床検体から分離された病原真菌と免疫細胞(マウスマクロファージ様細胞)を様々な条件下共培養を行った.細胞のみの培養,菌のみの培養および,共培養の際の化合物生産をHPLCで比較し,共培養特異的化合物を見いだした.
病原放線菌Nocardia tenerifensisとマウスマクロファージの共培養により生産されるnocarjamideの生産機構の解明に向け種々検討し,N. tenerifensisは,マクロファージの出す比較的大きいタンパク質に反応している可能性があると推定した.
病原真菌Aspergillus属とマウスマクロファージ様細胞の共培養を行い,共培養特異的に産生される化合物を単離・構造決定した.また,RNA-seq.により,fumarylalanineの生合成クラスターSidEが共培養特異的に発現が上昇することを見いだした.Aspergillus属とマウスマクロファージ様細胞との共培養で,fumarylalanineの生合成が上昇し,化合物は,fumarylalanineを用いて生合成されたと推測した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

病原放線菌Nocardia tenerifensisとマウスマクロファージの共培養により生産されるnocarjamideの生産機構の解明に一歩前進し,N. tenerifensisは,マクロファージの出す比較的大きいタンパク質に反応している可能性があると推定した.また,病原真菌Aspergillus属とマウスマクロファージ様細胞の共培養を行い,共培養特異的に産生される化合物を単離・構造決定し,RNA-seq.により,fumarylalanineの生合成クラスターSidEが共培養特異的に発現が上昇することを見いだした.共培養特異的化合物はfumarylalanineを用いて生合成されたと推測することができている.
また,その他のAspergillus属において,動物細胞との共培養も検討しており,共培養特異的化合物を2種,単離・構造決定に進んでいる.
また,その他の病原微生物と動物細胞との共培養も検討しており,共培養特異的化合物を2種得ており,構造解析中である.
このように,他の共培養系でも共培養特異的化合物が得られているため,本研究は順調に進んでいる.

今後の研究の推進方策

今後は,現在,共培養特異的化合物が得られている,Aspergillus属,病原微生物の単離化合物の詳細な構造解析を行い,さらに,RNA-seqを用いて動物細胞との共培養で発現が上昇している遺伝子から生合成遺伝子を特定していく.さらに,その生合成遺伝子をノックアウトした際に化合物が産生されなくなるかも検証する.また,動物細胞との共培養で,どうして休眠遺伝子が活性化されるのかのメカニズム解析のため,微生物と細胞の接触が必要なのか,細胞の培養液のみの添加で微生物の休眠遺伝子が活性化されるのか,などを検討していく.
また,今年度は,さらに異なるカテゴリーの微生物の使用も計画しており,本共培養系の応用範囲を検証していく.
また,合成的なアプローチも計画しており,単離された共培養特異的化合物を有機合成的に供給し,その生物活性を検討していく.生物活性は,免疫抑制活性や,神経幹細胞の分化促進活性,がん細胞への毒性,がん細胞の遊走阻害活性などである.また,重要なシグナル伝達である,Wnt, Hedgehog, Notchシグナルの細胞アッセイ系も有しており,それらへの影響も検討する.

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Evaluation of Naturally Occurring HIF‐1 Inhibitors for Pulmonary Arterial Hypertension2021

    • 著者名/発表者名
      Arai Midori A.、Sakuraba Kota、Makita Yoshinori、Hara Yasumasa、Ishibashi Masami
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 22 ページ: 2799~2804

    • DOI

      10.1002/cbic.202100223

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Practical Stereoselective Synthesis of C3‐Spirooxindole‐ and C2‐Spiropseudoindoxyl‐Pyrrolidines via Organocatalyzed Pictet‐Spengler Reaction/Oxidative Rearrangement Sequence2021

    • 著者名/発表者名
      Kondo Masaru、Matsuyama Naoki、Aye Tin Z.、Mattan Irshad、Sato Tomoyuki、Makita Yoshinori、Ishibashi Masami、Arai Midori A.、Takizawa Shinobu、Sasai Hiroaki
    • 雑誌名

      Advanced Synthesis & Catalysis

      巻: 363 ページ: 2648~2663

    • DOI

      10.1002/adsc.202001472

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Isolation of nocobactin NAs as Notch signal inhibitors from Nocardia farcinica, a possibility of invasive evolution2021

    • 著者名/発表者名
      Arai Midori A.、Ebihara Itsuki、Makita Yoshinori、Hara Yasumasa、Yaguchi Takashi、Ishibashi Masami
    • 雑誌名

      The Journal of Antibiotics

      巻: 74 ページ: 255~259

    • DOI

      10.1038/s41429-020-00393-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Acacienone, a terpenoid-like natural product having an unprecedented C20 framework isolated from Acacia mangium leaves2021

    • 著者名/発表者名
      Hara Yasumasa、Totsugi Yuichi、Ichikawa Hiroshi、Harada Shinji、Fujii Kazuki、Ahmed Firoj、Sadhu Samir K.、Arai Midori A.、Ishibashi Masami
    • 雑誌名

      Journal of Natural Medicines

      巻: 75 ページ: 99~104

    • DOI

      10.1007/s11418-020-01457-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Target Protein-Oriented Isolations for Bioactive Natural Products2021

    • 著者名/発表者名
      Arai Midori A.
    • 雑誌名

      Chem. Pharm. Bull.

      巻: 69 ページ: 503-515

    • 査読あり
  • [学会発表] Ascl1発現阻害作用を有するヘテロ環含有ロカグラミド誘導体の創製 (第2報)2022

    • 著者名/発表者名
      蒔田吉功,齋藤 駿,石橋正己,荒井 緑
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 病原真菌と免疫細胞の共培養法を用いた休眠遺伝子活性化による新規天然物の探索2022

    • 著者名/発表者名
      氏江優希子,齋藤 駿,矢口貴志,荒井 緑
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 腸内細菌が生産する代謝物からの免疫機能制御物質の探索2022

    • 著者名/発表者名
      細内梨央,齋藤 駿,荒井 緑
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] 耐熱性放線菌JA74株が生産する熱ショック代謝物maniwamycin類の全合成及び生物活性評価2022

    • 著者名/発表者名
      船山佳世,齋藤 駿,加藤 航,新藤一敏,川本芽子,松原輝彦,佐藤智典,乙黒聡子,前仲 勝実,井本正哉,荒井 緑
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] Search for bioactive natural products by original methods: Fishing by protein-beads and microorganism-animal cells co-incubation2021

    • 著者名/発表者名
      Arai Midori A.
    • 学会等名
      Pacifichem2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 新規探索法による生物活性天然物の開拓:魚釣り法と微生物ー動物細胞共培養法2021

    • 著者名/発表者名
      荒井緑
    • 学会等名
      有機合成化学講習会
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規探索法による生物活性天然物の開拓 :魚釣り法と微生物―動物細胞共培養法2021

    • 著者名/発表者名
      荒井緑
    • 学会等名
      近畿化学協会合成部会 第1回合成フォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] Synthesis of rocaglamide derivatives with TRAIL-resistance overcoming activity2021

    • 著者名/発表者名
      Y. Makita, M. A. Arai, M. Ishibashi
    • 学会等名
      Pacifichem2021
    • 国際学会
  • [学会発表] Search for new natural products from pathogenic actinomycetes of the genus Nocardia by co-culture with animal cells2021

    • 著者名/発表者名
      Y. Hara, M. A. Arai, T. Yaguchi, M. Ishibashi
    • 学会等名
      Pacifichem2021
    • 国際学会
  • [学会発表] Search for natural products with BMI1 promoter inhibitory activity from Andrographis paniculata2021

    • 著者名/発表者名
      K. Fujii, M. A. Arai, Y. Hara, S. K. Sadhu, F. Ahmed, M. Ishibashi
    • 学会等名
      Pacifichem2021
    • 国際学会
  • [備考] 慶應義塾大学理工学部生命情報学科 ケミカルバイオロジー研究室

    • URL

      https://keiochembio.com

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公開日: 2022-12-28  

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