研究課題
上皮間葉転換 (EMT) は、がんの浸潤・転移をはじめとしたがんの悪性化に深く関与している。しかしながら、EMT研究においては、in vitroで得られた結果と、in vivoでの研究結果との間で整合性がつかないことも多く、両者を隔てる原因として、生体における腫瘍の時間空間的多様性が考えられる。本研究では、EMTを起こしたがん細胞の生体内動態を可視化できるイメージングシステムを構築して、EMT形質の獲得および腫瘍化に重要な因子やシグナル伝達を明らかにし、がん転移を予防または克服する薬の創造的開発につながることを目的とした。前年度に引き続き今年度の研究では、EMT誘導に伴い変動する因子として同定したID3(inhibitor of DNA-binding/differentiation 3)に着目し研究を進めた。がんゲノムデータベースTCGA(The Cancer Genome Atlas)よりID3は肺がんをはじめとする様々ながん種において、正常組織と比較してがん組織でのID3の発現低下が確認された。加えて、肺がん及び乳がん患者コホートにおいて、ID3低発現群において全生存期間が有意に短縮していた。A549細胞においてID3をノックダウンし、in vitroでの遊走能とin vivoでの転移能を検討したところ、ID3はE-cadherinの発現抑制を介して肺がん細胞の転移抑制に寄与することが明らかとなった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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