研究課題/領域番号 |
21H02661
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
福田 敦夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50254272)
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研究分担者 |
才津 浩智 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40402838)
和氣 弘明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90455220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | GABA / CRH / AgRP / 低栄養 / 弓状核 |
研究実績の概要 |
1.胎仔における既知HPA軸と新規HPA軸の解剖学的発達過程の同定:胎生15.5、生後0、7日で検討した。CRH-Venusマウス室傍核でのCRH細胞体の発現、正中隆起への軸索の投射は胎生15日から、KCC2の発現は細胞体では胎生15日から認められたが終末での発現はなかった。NKCC1は終末では生後7日から発現がみとめられたが細胞体での発現はなかった。VGATの発現はCRH細胞体、終末ともに生後 0日から認められた。以上より、GABAによるCRHニューロン制御機構は既知HPA軸が生後0日頃に完成し、新規軸は遅れて生後7日頃と考えられた。 2.胎仔における既知HPA軸と新規HPA軸の生理学的発達過程の同定:グラミシジンパッチクランプ法によりCRH細胞のGABA逆転電位を測定した。生後0-2日では-59 mV、生後7日では-70 mVで既知HPA軸のGABA抑制の発達は生後と考えられた。新規HPA軸の発達を検討するため、AAVを用いてCRH細胞にGCaMP、 AgRP細胞にDREADDを発現させ、弓状核―正中隆起スライスでAgRP細胞からパッチクランプ記録した。CNO還流投与でAgRP細胞を選択的に興奮するにはCa-freeでシナプス伝達遮断が必要で、AgRP細胞間の局所回路的抑制を発見した。 3.低栄養時の母体と胎仔における既知・新規HPA軸反応の確認:妊娠母獣の摂餌制限による胎生期低栄養モデル作製のため、母体のコルチコステロン(CORT)上昇をまず検討した。AgRP Cre::Gad67 flox の低栄養ではCORT低下は有意でなく、Gad65の影響や上記AgRP細胞間の脱抑制が考えられたので、CRH Cre::NKCC1 flox マウスを低栄養にし、新規HPA軸の活性化を阻害したところ、低栄養によるCORT低下は有意に減少し、新規HPA軸の栄養モニター機能が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術的な問題から、CRH-GCaMP3マウスをCRH-Venusマウスに変更し、また、CRH-GCaMP3マウスとAgRP-mCitrine-DREADDマウスの交配を行う予定であったが、AAVを用いてCRH細胞にGCaMP、 AgRP細胞にDREADD(mCherry)を発現させる変更を行った。また、AgRP細胞間の局所回路的抑制が予想外にあったため、AgRP細胞からパッチクランプ記録しCNO還流投与でAgRP細胞を選択的に興奮するにはCa-freeでシナプス伝達を遮断する必要があった。そのため、正中隆起の細胞内Ca2+応答をCRH神経終末(GCaMP3)で記録する実験は、次年度も継続して行うこととした。以上の変更点はあったが計画そのものに大きな支障はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.胎仔における既知HPA軸と新規HPA軸の解剖学的発達過程の同定:昨年に引き続き、胎生15.5日、生後0日、7日でCRH細胞でのCRHとKCC2の発現時期を同定し、既知HPA軸の発達時期を確認する。新規HPA軸に関しても正中隆起へのCRH投射とGABA投射の完成時期とNKCC1発現時期を明らかにする。 2.胎仔における既知HPA軸と新規HPA軸の生理学的発達過程の同定:胎生15.5-17.5日、生後0-2日、7-9日のCRH venusマウスの急性スライス標本を用いて、グラミシジン穿孔パッチクランプ法によりCRHニューロンからGABAの逆転電位の測定を行い、細胞内Cl濃度の低下からKCC2の機能的発現時期を明らかにする。またCRHニューロンへのGABA投与を行い、興奮性からの抑制性への変化の時期を明らかにする。 3.低栄養時の母体と胎仔における既知・新規HPA軸反応の確認:母獣の摂餌制限(-30%)を妊娠10.5-19.5日に行い、胎生期低栄養モデルマウスを作製する。母体のコルチコステロン(CORT)の上昇をまず明らかにする。CRH Cre::NKCC1 flox マウス母獣を低栄養にして、弓状核から正中隆起CRH終末へのGABA入力の興奮性を消去した低栄養母体のCORTを測定し、新規HPA軸の栄養モニター機能を検討する。胎仔でもCORTを測定し、胎仔脳のc-fosの発現部位を蛍光標識されたAgRP細胞とCRH細胞で検討して、母体低栄養に対する胎仔の新規および既知HPA軸反応の役割を検討する。 4.インビボ2光子イメージングによる神経回路機能解析:生後8 週齢でアデノ随伴ウィルス(AAV)によりGCaMP6fを神経細胞に発現させ、神経細胞集団の活動を2光子顕微鏡によるCa2+イメージングで記録し、新規HPA軸の影響を観察する。
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