研究課題/領域番号 |
21H02662
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
和氣 弘明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90455220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミクログリア / 異種感覚の可塑性 |
研究実績の概要 |
本研究では感覚領域間の機能的結合に着目し、感覚喪失時に引き起こされる異種感覚の可塑性のメカニズムをミクログリアのシナプス修飾の観点から明らかにする。視覚遮断マウスモデルを用いて、第一次感覚野→高次視覚野の機能的結合に着目し、その機能的結合および高次視覚野内で起こる神経回路再編のメカニズムをミクログリアの観点から分子基盤を明らかにする。 まずこれまでの先行研究より第一次感覚野→高次視覚野への結合があることが示唆されているため、この結合を可視化した。それぞれに順行性標識および逆行性標識しS1→V2Lの神経回路結合があることが明らかとなった。そこでこのS1バレル野からのV2Lでの軸索のヒゲ刺激に対する応答を2光子顕微鏡によって可視化したところ、軸索応答はヒゲ刺激に同期していることがわかった。複雑な物体提示の時にV2Lの活動を要するのではないかと考え、異なる紙やすりの提示に対する応答を検証した。視覚遮断群で正常群と比してどちらの紙やすりに対する提示にもカルシウム活動の頻度が増加することがわかった。さらにミクログリアを薬理学的手法によって除去し、検証したところ、ミクログリア除去群においてはこの有意な神経細胞のカルシウム活動頻度の増加は認められないことがわかった。そこで免疫組織学的染色によってそのV2Lにおける詳細を検証したところ抑制性シナプスの数が減少していること、ミクログリアが興奮性細胞周囲に接触し、物理的に抑制性シナプスを剥がしている可能性があること、そこにMMP9が関与していることがわかった。さらにこの異種感覚の結合及びそれによるヒゲ刺激に対する視覚野の応答はヒゲの識別を担っているかを検証するためにこの異なる紙やすりに対するGo, No-go試験を行ったところ視覚遮断マウスでは有意に学習過程の促進を認めることが明らかとなった。本研究は現在論文に投稿中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通りに研究が進捗していることに加え、新たにこの経路の活動を操作することによる動物行動に対する作用が加えて実証されており、当初よりも順調に進捗している
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今後の研究の推進方策 |
今後このミクログリアによる異種感覚の可塑性誘導を担う分子群を明らかにし、それを阻害した際の異種間感覚の可塑性の発現を検証する。現在の段階で、MMP9が候補分子として上がっており、予備研究においてはこのMMP9を阻害することによって異種感覚の可塑性が誘導できないことが明らかとなっている。さらにこの異種をつなぐ感覚経路の活動を成熟動物で誘導した際の動物行動の変化などを検証する。現在成熟動物で視覚遮断を作成し、この経路を活性化することでV2Lにおけるアストロサイトの活動が有意に減少することがわかっており、これによってアストロサイト依存型の可塑性誘導が損なわれるのではないかと検証するところである。さらにホログラフィック顕微鏡や化学遺伝的手法によってこのV2Lの細胞活動を操作した場合の学習行動も今後検証していくところである。
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