研究課題
①ヒト骨形成不全症の家系に重篤なTRIC-B遺伝子変異が見出され、我々はTRIC-B欠損マウスが骨密度低下を伴う骨形成不全症モデル動物となることを報告した。この骨密度低下は骨芽細胞において小胞体Ca2+過剰負荷が引き起こす、コラーゲンを主成分とする骨基質の合成・分泌障害に起因することが判明している。その継続検討にてTRIC-B欠損マウスの成長骨の成長板軟骨細胞において異常な細胞死が観察されおり、今年度はその細胞死メカニズムを検討した。主要な小胞体ストレス経路の中でPERK経路が顕著に活性化し、細胞死関連転写因子CHOPやカスパーゼ12の発現亢進が観察された。②MG23欠損マウスにおいてマクロファージ(MΦ)の機能異常が薬理学的に示唆されており、MG23欠損によるMΦのCa2+ハンドリング異常が注目される。しかしながら、MΦの基本的なCa2+ハンドリングは不明であり、その基礎データを収集することが不可欠であった。その検討中に、in vitro実験で汎用される常在型とチオグリコレート誘導型の腹腔MΦには明確な相違があることが判明した。判明した相違の中で、チオグリコレート誘導型MΦでは、定常状態でTRPM7, TRPA1とTRPP2チャネルが自発的なCa2+流入を分担担当していることが特記された(Liu et al. Cell Calcium 96, 102381, 2021.)。
2: おおむね順調に進展している
TRICチャネルの機能解析は順調に進展している一方で、MG23チャネルについてはやや遅延している。しかしながら、マクロファージ機能に着眼してMG23チャネル機能を検討する準備状況は既に整い、次年度には本格的に解析可能となっている。従って、総合評価としては(2)と判断される。
遺伝子欠損マウスを利用したTRICおよびMG23チャネルの生理機能解析実験を、2022年度は計画どおり遂行する。MG23に関する研究は、予想に反して論文報告を伴うほど、マクロファージの予備的検討が複雑化して、進捗が遅延した。しかしながら、マクロファージの基本的なCa2+ハンドリングが判明した現在では、順調なMG23機能解析が展望される。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
eLife
巻: 11 ページ: e71931
10.7554/eLife.71931.
Cell Calcium
巻: 96 ページ: 102381
10.1016/j.ceca.2021.102381.
https://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/