研究課題
①TRICチャネルに関する研究:TRIC-B遺伝子変異はヒト骨形成不全症の原因であり、Tric-b欠損マウスでは骨芽細胞のコラーゲン産生障害により骨密度低下が観察される。TRIC-B変異の骨形成不全症患者では成長障害が観察されるため、骨伸長に寄与する成長板軟骨細胞の機能低下が推定される。昨年度の研究により、Tric-b欠損マウス胎児の大腿骨等の成長板では異常な軟骨細胞死が観察され、そのアポトーシス様の細胞死には小胞体ストレスセンサーPERKの活性化が寄与することが判明した。今年度の継続研究では、PERK活性化により細胞内Ca2+濃度が上昇することで、Ca2+依存性タンパク質分解酵素カルパインの活性化し、アポトーシス関連タンパク質分解酵素カスパーゼ12が部分分解により活性化して、Tric-b欠損成長板では軟骨細胞死が誘導されることが推定された(論文投稿中)。②MG23チャネルに関する研究:MG23の生理機能の解明に向けて、MG23欠損マウスの骨格筋とマクロファージに着目した研究を遂行した。MG23欠損骨格筋において、小胞体Ca2+取り込み効率の低下、Zn2+誘導による小胞体Ca2+漏出の低下、物理的ストレスによる筋疲労からの回復改善などの野生型筋とは異なる特性が観察された。これらの機能変化はMG23による小胞体Ca2+漏出機能の欠損によるものと推察された(論文準備中)。
2: おおむね順調に進展している
TRICとMG23の両課題における2022年度の研究において、それぞれ論文発表に至る成果が得られた。
研究実績には記述していないが、MG23欠損マクロファージにおいても小胞体Ca2+ハンドリング異常が観察されており、次年度の継続研究でおいて成果取りまとめが期待される。また、TRIC-B欠損成長骨の解析研究において、成長板軟骨細胞のCa2+シグナルが骨伸長に多大に寄与することが明らかになった。そのCa2+シグナルの生成機序に基づき、cGMP分解酵素の阻害薬が様々な疾病における肢体成長不良を改善する可能性が示唆されており(特許出願済)、実際の創薬応用を展望する研究課題にも取り組む予定である。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
J. Cell Physiol.
巻: 237 ページ: 2980-2991
10.1002/jcp.30762
https://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/index.html