現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV3とANO1の機能連関を明らかにすることができた(2023年論文発表)。これまでに、TRPV1, TRPV3, TRPV4, TRPA1というCa2+透過性の高いTRPチャネルとANO1の機能連関を証明してきた。これは、研究室の研究対象である温度感受性TRPチャネルがもつ高いCa2+透過性の生理的意義をある程度説明できるものと考えられる。感覚神経においてはCl-流出による脱分極の増強から痛みや痒みの増強、腺分泌細胞ではCl-流出をdriving forceとした水分泌(脳脊髄液、唾液、涙)の増大、表皮ケラチノサイトでは増殖・移動の促進による早い創傷治癒に関わっていることが明らかとなった。他にもCa2+透過性の高いTRPチャネルは多く、すでに明らかにしたTRPV1, TRPV3, TRPV4, TRPA1でも他の生理機能に関わっている可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
TRPチャネルを介して流入したCa2+の作用として、Ca2+活性化K+チャネルがANO1と複合体を形成してCl-移動に伴って起こるK+移動を担っていると考えており、候補としてKCa3.1, KCa2.1, KCa1.1を考えている。HEK293細胞を用いた強制発現系と上皮細胞でパッチクランプ法を用いた電気生理学的解析と共免疫沈降法およびDuolink Assay含めた生化学的解析を行って、Ca2+活性化K+チャネルとTRPチャネルの物理的結合及び機能連関を明らかにする。この機能連関にはTRPM2も関わって3量体の複合体を形成するという予備的な結果を得ており、TRPM2の活性化で流入したCa2+がCa2+活性化K+チャネルを活性化することを電気生理学的(逆転電位のシフト)と薬理学的に証明する。そして、K+流出は水の流出を惹起することから、TRPM2活性化の下流でCa2+活性化K+チャネルの活性依存的な細胞容積変化が起こるかを検討する。Ca2+活性化K+チャネルの活性化はインフラマソームの活性化を惹起することが知られており、マウス脳内ミクログリアでサイトカイン産生が変化しているかどうかを検討する。Ca2+活性化K+チャネルの活性化は水流出を介して脳内ミクログリアの移動方向に対して尾部の分離収縮に寄与すると考えられることから、脳内ミクログリアの温度依存性の運動性へのCa2+活性化K+チャネルの関与を薬理学的に検討する。
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